耐水性、防水性(耐水度、防水度)

傘の「耐水度」を徹底検証:防水性試験からコーティング技術まで

雨の日に傘をさしたとき、生地が水をしっかりと遮断し、雨漏りを防いでくれるのはなぜでしょう?その鍵を握るのが、傘の耐水度(たいすいど)です。耐水度とは、生地がどれだけの水圧に耐えられるかを示す指標であり、一般的に防水性と表現されることもあります。ここでは、傘がどのようにして高い防水性を実現しているのか、その品質試験と技術について詳しく見ていきましょう。


耐水度試験の仕組みと方法

傘の耐水性を客観的に評価するために、JIS(日本産業規格)に基づく試験が行われます。この試験は、生地に人工的な水圧をかけることで、水の浸透に対する抵抗性を評価するものです。

試験方法

この試験には、JIS L 1092 A法(低水圧)という規格が用いられます。以下に具体的な手順を解説します。

  1. 試験片の準備: 約150mm×150mmの試験片を5枚採取し、検査に備えます。

  2. 試験片の設置: 1枚ずつ、生地の表側が水に当たるようにクランプにしっかりと取り付けます。

  3. 水圧の印加: 水位を1分間に600±30mmの速度で上昇させ、試験片に水圧をかけていきます。

  4. 測定: 3ヶ所から漏水が始まった時の水位をmm単位で測定し、その平均値が耐水度として評価されます。


試験結果の判定基準

耐水度試験には、厳格な判定基準が設けられています。

  • 基準値: 傘の耐水度は250mm以上が一般的な基準とされています。この数値は、生地が250mmの高さの水圧に耐えられることを示しており、数値が大きいほど防水性能が高いと判断されます。ちなみに、レインウェアのJIS規格では2,000mm以上が基準とされており、傘とレインウェアでは求められる耐水性能に大きな違いがあることが分かります。

  • 注意点: 傘の耐水度が高いからといって、完全に濡れないわけではありません。傘は複数の生地を縫い合わせて作られるため、縫い目などから水が浸入する可能性があるからです。そのため、耐水度と漏水性試験の両方で、傘の防水性能を総合的に評価することが重要です。


防水コーティングの種類と技術

傘の防水性を高めるには、主に生地の裏面にコーティングを施し、水を物理的に遮断する技術が使われます。これは、水を弾く撥水加工とは目的が異なります。

  1. アクリルコーティング 雨傘では最も一般的な防水加工です。

    • メリット: アクリル樹脂を生地の裏面に塗布することで、薄い膜を形成し、水の浸透を防ぎます。安価で加工しやすいのが特徴です。

  2. ポリウレタンコーティング(PUコーティング) ポリウレタン樹脂を塗布する防水加工です。

    • メリット: アクリルコーティングに比べて、耐久性や耐摩耗性に優れており、高い防水効果が期待できます。また、遮光性もあるため、晴雨兼用傘にも多く用いられています。

  3. ラミネート加工 生地にフィルムを貼り合わせる防水加工です。

    • メリット: ポリウレタンコーティングと同様に高い防水性と遮光性があります。

    • デメリット: 接着剤を使用するため、コストが高くなる傾向があり、また生地が重く硬くなる傾向があります。

ちなみに、シルバーの傘は防水コーティング面をあえて表に出したものです。これにより、太陽光を反射させて遮熱効果を高める目的があります。


撥水性と耐水性の関係

撥水性と耐水性は、どちらも傘の防水性能に関わる重要な要素ですが、それぞれ異なる役割を担っています。

  • 撥水性: 水滴を弾くことで、雨が傘布に留まる時間を短くし、水が浸透するリスクを低減します。傘を閉じたときに水滴がサッと落ちるため、快適な使い心地につながります。

  • 耐水性: 水圧に耐え、水を遮断することで、豪雨でも水が傘の内部に浸透しないようにします。

優れた傘は、撥水加工で水滴を弾きつつ、高い耐水性で水を遮断するという、両方の性能を高いレベルで兼ね備えています。

この耐水度試験により、傘生地の防水性を客観的に評価し、お客様に安心してご使用いただける製品を提供できるよう努めています。

 

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