続・人気のシルバー日傘、そのウラガワ。メーカーが見た「本当に涼しい傘」の条件とは?

開発中のシルバー生地
開発中のシルバー生地

先日、人気のシルバー生地日傘が持つ「撥水性」の秘密について、少し専門的なウラガワの話をさせていただきました。多くの反響をいただき、シルバー生地への関心の高さを改めて実感しています。

そして今回は、その続編です。

実は、アンベルでは現在、皆様のご期待に応えるべく独自のシルバー生地の開発を進めています。「作るからには、最高のものをお届けしたい」。その想いから、私たちはまず市場を知ることから始めました。

普段はあまり他社様の製品を細かく分析することはないのですが、今回は特別に、現在人気を集めている数社のシルバー傘を実際に購入し、その生地性能や風合いを徹底的に比較・調査しました。

今回は、その開発の裏側でわかった「シルバー日傘のリアル」と、私たちが目指す「本当に涼しい傘」についてお話しします。

(※あくまで私たちが独自に調査した結果であり、特定のメーカー様やブランド名を公表する意図はございません。)


市場調査で見えてきた「シルバー日傘」のリアル

実際に複数の製品を比較してみると、多くの発見がありました。

まず良かった点は、シルバー生地であれば、一般的に遮熱性が高いとされるホワイト系の生地と同等か、それ以上の「遮熱率」が期待できる傾向にあったことです。やはり、光を反射するシルバーという色には、確かな遮熱効果があることが分かります。

しかし、その一方で「遮光性」や「UVカット性能」となると、製品による品質のばらつきが大きい、という課題も見えてきました。


その傘、本当に涼しい? LEDライトで分かった衝撃の事実

特に驚いたのが、あるテストでのことです。世間では「涼しい日傘」として非常に評判の高い製品に、内側からスマホのLEDライトを当ててみたのです。

すると、光が生地を透かして、うっすらと向こう側が見えるものがありました。

「涼しい」と評判である以上、その傘は高い「遮熱率」を備えているはずです。そして通常、高い遮熱性は高い「遮光性」をベースとし、さらにシルバーという色の力で熱を反射させることで成り立っています。だからこそ、生地は全く光を通さないのが大前提のはずでした。

それなのに光が透けるということは、目に見えない光、つまり熱線である「近赤外線」も透過している可能性が高いということです。

熱を通すのであれば、それは本当に「涼しい傘」と言えるのでしょうか? 私たちは、この点に大きな疑問を感じました。

他社製 透けるシルバー生地
他社製 透けるシルバー生地
アンベル開発中 透けないシルバー生地
アンベル開発中 透けないシルバー生地


シルバーでも「透ける傘」と「透けない傘」

つまり、シルバー生地であっても光が透けてしまう傘は市場に数多くあり、光が透けるということは、涼しさの源である遮熱効果が低いことを意味します。

私たちが調査した範囲でも、その透け具合は千差万別でした。うっすらと光を感じるもの(遮光率99.9%程度)から、はっきりと光源が分かるくらい透けてしまうもの(遮光率99%以下)まで様々です。

特に後者のようにかなり透けてしまうものは、十分な遮熱効果を発揮しにくく、お客様がシルバーという色からイメージされる「涼しさ」とはギャップがある製品が、残念ながらかなり出回っていると思われます。

もしお手元にシルバーの傘をお持ちでしたら、スマートフォンのLEDライトを生地にぴったり当てて、内側から光が透けないか確認してみてはいかがでしょうか。

 

【重要】セルフチェック時の注意点
記事の中で、スマートフォンのLEDライトで透け具合を確認する方法をご紹介しましたが、一点だけ非常に重要な注意点がございます。シルバー傘などに使われるポリウレタン(PU)コーティングは、実は局所的な熱にあまり強くありません。スマホのLEDライトは長時間点灯すると、想像以上に高温(60℃以上になることも)になり、これを生地に密着させ続けると、熱でコーティングが分解(熱分解)され、煙が発生する場合があります。

続けると生地が溶けたり焦げたりするだけでなく、発生した煙に有害な物質が含まれている可能性もあります。セルフチェックを行う際は、ライトを生地に長時間密着させず、透けるかどうかを短時間でさっと確認する程度に留めてください。

 


私たちが目指すのは「本物」。2026年にお届けしたいこと。

今回の調査を経て、私たちが目指すゴールがより明確になりました。

それは、シルバーという素材の持つ高い遮熱効果を最大限に活かしつつ、光も近赤外線もしっかりと遮断する、最高レベルの遮光性を両立させた生地を作ることです。

見た目やトレンドだけではない。第三者機関の厳格な試験をクリアし、誰がどう見ても「これは本物だ」と納得できる品質を追求する。それが私たちの使命だと考えています。

現在、この理想のシルバー生地の実現に向けて、試行錯誤を重ねている真っ最中です。皆様のお手元に「本当に涼しい、アンベルのシルバー傘」を2026年にはお届けできるよう、開発を進めてまいります。

どうぞ、ご期待ください。


<執筆者:辻野義宏>
アンベル株式会社 CEO。30年以上に渡って傘の開発および研究を続けている。革新的な機能を追求し続ける日本の傘ブランド「AMVEL (アンベル) 」では、時代によって変化するベストを追求し、最先端の技術を駆使した傘をお届けしています。