グラスファイバー骨の傘を安全にお使いいただくために|危険性と対処法を解説

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この度、国民生活センターより、「ガラス繊維強化プラスチック」(通称:グラスファイバー)を使用した製品による怪我に関する注意喚起が発表されました。

グラスファイバーは、多くの傘の骨に採用されている非常に身近な素材です。だからこそ、お客様に安全に、そして安心して製品をお使いいただくために、私たち傘メーカーからその特性と、安全なご使用のための注意点について改めてご案内させていただきます。

この記事では、傘の専門家として、グラスファイバーの特性から、潜む危険性、安全な使い方、そして万が一怪我をしてしまった際の対処法まで、詳しく解説いたします。

そもそも「グラスファイバー」とは?なぜ傘の骨に使われるのか

グラスファイバー骨拡大
グラスファイバー骨拡大

最近、「グラスファイバー骨」を特徴として謳う傘が増えていますが、具体的にどのような素材かご存知でしょうか。

 

 

軽くて、強くて、錆びない。傘に最適な素材

グラスファイバーとは、その名の通り「ガラス繊維」を束ね、プラスチック(樹脂)で固めて成形した素材です。この素材には、以下のような優れた特徴があります。

  • 軽量でしなやか:軽いため、持ち運びの負担が少ない傘を作ることができます。また、弾性が高いため、風を受けてもしなやかに曲がり、折れにくい性質を持ちます。

  • 高い強度:鉄やアルミニウムといった金属に匹敵するほどの強度を持っています。

  • 錆びない:金属ではないため、雨に濡れても錆びることがありません。

  • 経済的:高機能でありながら、比較的安価に製造することが可能です。

これらの特徴から、グラスファイバーは「軽さ」と「丈夫さ」を両立できる理想的な素材として、多くの傘の親骨(傘生地を支える長い骨)や受骨(親骨を内側から支える短い骨)に採用されています。

注意すべき危険性とは?国民生活センターの報告から見る事故事例

多くのメリットを持つグラスファイバーですが、その構造ゆえに注意すべき危険性も潜んでいます。

「見えないトゲ」が刺さるリスク

グラスファイバーの表面から、目には見えにくいほど細いガラス繊維が露出していることがあります。この部分に素手で触れると、細かいトゲのように繊維が皮膚に刺さり、怪我をするおそれがあるのです。

国民生活センターの調査によると、2020年4月から2025年6月末までの約5年間で、グラスファイバー製品に関する危害・危険情報は31件寄せられており、そのうち傘に関するものが8件(26%)と最も多く報告されています。怪我の内容は「刺傷・切傷」が半数以上を占め、特に「手指」への被害が多くなっています。

※情報元:国民生活センター「ガラス繊維強化プラスチックによるけがに注意!-傘の骨などに使用されています-」(令和7年9月17日)

実際にあった事故事例

実際に、以下のような事例が報告されています。

  • お子様が人とぶつかった際に傘の親骨が折れ、細かなガラス繊維が手に刺さった。

  • 数年前に購入した傘をさそうとしたら手に激しい痛みがあり、確認するとグラスファイバー製と表示があった。

なぜガラス繊維は飛び出すのか?

国民生活センターの商品テストでは、新品の傘であっても、骨の表面にガラス繊維の先端が露出しているものがあることが確認されています。

さらに、長年の使用による劣化や、強風で骨が曲がったり、物にぶつけて傷がついたり、折れたりすると、表面の樹脂が剥がれて内部のガラス繊維が露出しやすくなり、危険性が高まります。

大切なお子様とご自身を守るために。安全な傘の使い方4つのポイント

このようなリスクを踏まえ、お客様に安全に傘をご使用いただくために、以下の4つのポイントをぜひ実践してください。

  1. 【基本】骨の部分は素手で触らない
    グラスファイバー製の骨は、ささくれている可能性も考慮し、むやみに素手で触ることは避けてください。

  2. 【習慣】開閉時や持ち運びの際は、生地や先端を持つ
    傘を開いたり閉じたりする際や、持ち運ぶ際は、骨ではなく露先(傘生地の先端部分)や傘生地、ハンドルを持つように心がけましょう。

  3. 【要注意】骨が折れたり、ささくれたりした傘は使用を中止する
    骨が破損したり、表面がささくれていたりする傘は、ガラス繊維が露出している可能性が非常に高い状態です。怪我の原因となりますので、直ちに使用を中止してください。廃棄する際は、ガラス繊維に触れないよう、必ず手袋などを着用して安全に取り扱いましょう。

  4. 【確認】購入時は「品質表示」「注意表示」をチェックする習慣を
    ご使用の傘の下げ札やパッケージ、手元(ハンドル)に貼られたシールなどを一度ご確認ください。材質や注意表示が記載されています。私たちメーカーも、適切な情報表示に努めています。

もしガラス繊維が刺さってしまったら?慌てずできる応急処置

万が一、ガラス繊維が皮膚に刺さってしまった場合は、慌てずに以下の手順で対処してください。

  • STEP1:絶対にこすらない!
    刺さった部分をこすると、ガラス繊維がさらに皮膚の奥深くに入り込んだり、折れてしまったりして、取り除くのが困難になります。

  • STEP2:流水でやさしく洗い流す
    速やかに水道水などの流水や温水、石鹸で皮膚をやさしく洗い流してください。

  • STEP3:粘着テープで慎重に取り除く
    洗い流しても取れない場合は、ガムテープなどの粘着テープを皮膚に軽く押し当て、ゆっくり剥がすことで、表面の細かい繊維を除去できる場合があります。

  • STEP4:痛みが続く場合は、迷わず皮膚科を受診
    痛み、かゆみ、赤みなどの症状が続く場合や、ご自身での除去が難しい場合は、速やかに皮膚科などの医療機関を受診してください。特に、皮膚の薄い小さなお子様やご高齢の方が怪我をされた場合は、早めの受診を強くお勧めいたします。

すべてのお客様に安心していただくために。私たちの安全への取り組み

私たち傘メーカーは、今回の国民生活センターからの要望を真摯に受け止め、お客様に長く、安全に製品をご愛用いただけるよう、日々努力を重ねています。

具体的には、ガラス繊維が表面から飛び出しにくいような加工技術の改善や、より安全な代替素材の検討など、製品の安全性向上に向けた取り組みを引き続き進めてまいります。

また、家庭用品品質表示法に基づき、材質や取扱い上の注意に関する適切な情報表示を、今後一層徹底していく所存です。

まとめ

今回は、傘の骨に使われる「グラスファイバー」の危険性と、安全な使い方について解説しました。

  • グラスファイバーは「軽くて丈夫」というメリットがある一方、表面の細い繊維が皮膚に刺さる危険性がある。

  • 安全に使うためには、「骨を素手で触らない」「破損した傘は使わない」ことが重要。

  • 万が一刺さってしまったら、「こすらず、洗い流し、症状が続けば病院へ」。

グラスファイバーは、現代の傘にとって欠かせない便利な素材です。その特性とリスクを正しくご理解いただき、適切な使い方を心がけていただくことで、未然に事故を防ぐことができます。

この記事が、お客様ご自身はもちろん、製造や品質表示に携わるすべての方々の安全意識の向上に繋がり、皆様が安心して傘を使える社会の一助となれば幸いです。