- 「自社のこだわりの生地で傘を作りたい」
- 「どこにもない、世界初の機能を持つ傘を開発したい」
- 「展示会まであと1ヶ月。なんとかオリジナル傘を間に合わせたい」
オリジナル傘の製作(OEM)において、こうした熱意やユニークなアイデアは非常に素晴らしいものです。しかし、傘特有の製造ルールや専門知識を知らないまま依頼を進めてしまうと、「思わぬ落とし穴」にはまることがあります。最悪の場合、
- 「コストが想定の何倍にも膨れ上がった」
- 「納期にまったく間に合わなかった」
- 「期待した品質にならず、ブランドの信用を損ねた」
という結果にもなりかねません。
こんにちは、「amvel.net ブログ」編集部です。 この記事では、傘の専門家であるAmvelが、OEMの現場でよく直面する「実はNG(または非常に困難)なご依頼」を5つのパターンに分けて具体的に解説します。
これは決してお客様のアイデアを否定するものではありません。事前に「落とし穴」を知っておくことで、無駄な回り道をせず、スムーズで成功率の高い傘づくりを目指しましょう。
なぜ「NG」なのか? 傘OEMの特殊性
まず大前提としてご理解いただきたいのは、傘は「工業製品」であるという事実です。
アパレルの服や雑貨と同じようにデザイン性が重視される一方で、傘は生地、骨、ハンドルなど多くのパーツで構成され、雨風から身を守るという「機能性」(耐水、撥水、強度)が厳しく求められます。
そのため、一般的なアパレル製品とは異なる、特有の制約や品質基準が存在するのです。
【落とし穴1】品質理解なき「生地持ち込み」
「自社ブランドで使っている、このこだわりの生地で傘を作ってほしい」というご依頼は非常に多くいただきます。生地のお持ち込み自体がNGなわけではありません。
しかし、アパレル用生地と傘用生地では、求められる性能が全く異なります。
なぜ難しい? 傘に必要な「生地の品質」
アパレルやバッグ用途の生地は、デザイン性や手触りを重視していても、傘に必要な以下の性能を満たしていない場合がほとんどです。
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耐水度: 生地がどれくらいの水圧に耐えられるかを示す数値です。この基準が低い生地で傘を作ると、強い雨の際に生地表面から雨水が染み込み、雨漏りの原因となります。
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撥水度: 生地表面で水を弾く性能です。初期の撥水性だけでなく、その持続性も重要です。
これらの品質試験データをクリアしていない生地を使用することは、メーカーとして品質を保証できず、大きなリスクとなります。
※雨の日に使えない日傘であれば製品化の可能性あります
見落としがちな「生地の厚み」
もう一つの重要なポイントが「厚み」です。 一般的な傘生地の厚みは0.15mm以下が主流です。私たちがOEMで使いやすい限度と考えるのも、一般的に0.15mm程度までです。
それ以上に厚い生地(例えば、帆布や厚手の合皮など)を使うと、以下のような問題が発生します。
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ゴワゴワして、きれいにたためない
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たたんだ際にかさばり、傘袋(収納ケース)に収まらない
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骨との接合部(縫製部分)に負荷がかかり、破損しやすい
「たたみにくい」という感覚的な問題は、お客様の満足度を著しく下げ、商品価値を損ねる可能性があります。
どうすればOK?
生地を持ち込みたい場合は、まず生地サンプルと、可能であれば耐水度や撥水度の品質試験データ(スペックシート)をメーカーに提示し、傘として使用可能か相談してください。
もしデータがない場合は、メーカー側で試験を行う必要があります(別途費用と時間がかかる場合があります)。 また弊社で持ち込み生地での張りサンプルを提供しますので、お客様で傘として問題ないかを十分に検討してください。
品質とスピードを両立させるなら、メーカーが推奨する傘専用の高密度ポリエステルなどから選ぶ方が、結果的に確実で早いことが多いです。
- 傘の品質については、当ページの「傘の品質」ページを参照してください。
【落とし穴2】工数と期間を無視した「骨の新規開発」
「まだ世にない、まったく新しい構造の骨を作りたい」 「この特殊な形状で、自動開閉するオリジナルの骨が欲しい」
こうしたチャレンジングなご依頼も時折いただきます。Amvelとしても、できる限りお応えできるよう検討しますが、「骨の新規開発」のハードルは、お客様が想像されている以上に高いものです。
「この世にない骨」が生まれるまで
既存のパーツを流用できない「完全新規」の骨を開発するには、以下の工程が必要となり、膨大な工数とコストがかかります。
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設計・モデリング: 強度や機構を計算し、3Dデータなどで設計図を作成します。
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金型(かながた)の発注: 設計に基づき、パーツを成形するための「金型」を製作します。この金型費用が非常に高額になるケースが多くあります。
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試作(サンプル製作): 金型を使って試作品を製作します。
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厳格な検査と再試作の繰り返し: 試作品が設計通りの性能を出せるか、品質・強度検査(数百回の開閉耐久テスト、風洞実験など)を行います。しかし、ご指摘の通り、新規開発の場合、品質や強度の面で一発で合格することはまずありません。
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修正・再設計: 検査で見つかった問題点を解決するため、金型の修正や設計の見直しを行います。この「検査→修正→再試作」のプロセスは、基準をクリアするまで複数回繰り返し行うことになり、これが期間とコストを要する最大の要因となります。
どうすればOK?
まずご理解いただきたいのは、「時間」「数量」「実現可能性」という3つの大きなハードルです。
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時間: もしゼロから金型を起こすような新規開発を行う場合、前述の通り「再試作」が複数回発生することを見越して、製品化まで最低でも2年はかかるつもりで、長期的なプロジェクトとしてご計画ください。
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数量(コミットメント): このように、新型の骨開発には膨大な工数と金型コストがかかります。そのため、開発に協力する骨メーカー側も相応の見返り、つまり「発注数量」を求めます。数百本や数千本といった規模の発注では骨メーカーの協力を得ることは難しく、最低でも数万本単位での発注が見込めるような、強い発注意欲(コミットメント)がないと実現は困難です。
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実現可能性: また、ご依頼の際は「一定程度の実現可能性」が重要です。全くのアイデア段階ではなく、ある程度の設計図や構想、そして「なぜそれが必要なのか」という明確なコンセプトをご提示いただけると、メーカー側も具体的な検討がしやすくなります。
まずは、既存の骨の「組み合わせ」や「一部改良」でアイデアを実現できないか、メーカーと相談してみることをお勧めします。
【落とし穴3】製造時間を無視した「超・短納期」
「来月の展示会で、新製品としてオリジナル傘を発表したい」 「急なイベントが決まったので、3週間後までに500本作ってほしい」
こうした「超・短納期」のご依頼は、物理的に不可能な場合がほとんどです。
「来月のイベントで使いたい」が絶望的な理由
傘の生産拠点の多くは海外(主に中国)にあります。OEM生産には以下の時間が必要です。
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製造にかかる時間: 生地の手配、染色、プリント、骨やハンドルの製造、縫製、組立。最低でも1〜2ヶ月はかかります。
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輸送にかかる時間: 完成品を日本へ輸送します。船便の場合、約2〜4週間かかります。(航空便はコストが跳ね上がります)
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不確定要素: 現地の祝日(特に旧正月は1ヶ月近く工場が停止)、天候による船便の遅れ、通関手続きの遅延、感染症によるロックダウンなど。
これらの時間を考慮すると、3週間や1ヶ月での納品がいかに非現実的かお分かりいただけるかと思います。
適切なスケジュール感
ゼロから企画し、サンプル製作と確認(修正があれば再サンプル)を行う場合、最低でも発注から納品まで6ヶ月~1年は見ておくのが安全です。(既存品を活かすものでの4ヶ月〜)
もし「納期」が最優先事項である場合は、OEMでの新規製作は諦め、メーカーが国内在庫として持つ既製品へ「名入れ(ロゴプリント)」する対応が、唯一の現実的な選択肢となります。
【落とし穴4】仕様と予算の「壮大なミスマッチ」
「最高品質の素材を使い、フルカラープリントで、自動開閉機能もつけて、小ロット(100本)で。単価は1000円以下でお願いしたい」
これはOEMの現場で最も多いお悩みかもしれません。残念ながら、この「全部盛り」のご要望は、ほぼ実現不可能です。
「最高品質で、安く、小ロットで」という矛盾
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小ロットの現実: 傘の製造は、100本でも1000本でも、設計や生地・部材の手配、工場の生産ラインを動かすための「段取り」にかかる工数はあまり変わりません。そのため、小ロット(少数生産)になればなるほど、1本あたりの単価は割高になります。
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高機能の現実: 「カーボン骨」「本革ハンドル」「自動開閉」「全面プリント」…当然ながら、機能やこだわりのパーツを一つ追加するごとに、コストは足し算で増えていきます。場合によっては、特別な加工が必要になり、掛け算で増えていくこともあります。
どうすればOK?
まずは、「絶対に譲れないコンセプト」と「予算の上限」を明確にしてください。 そして、「この予算内で、このコンセプトを実現するには、どの機能を優先すべきか?」とメーカーに相談してください。
例えば、「軽さを最優先するなら、自動開閉は諦めて手開きにしましょう」「予算内でデザイン性を高めなら、全面プリントではなくワンポイント刺繍にして、ハンドル素材をグレードアップしませんか?」といった、プロの視点でのトレードオフ(代替案)をご提案できます。
【落とし穴5】安全を軽視した「デザイン優先」
「ブランドイメージに合わせて、先端が鋭く尖った石突(いしづき)を使いたい」 「子供用だが、デザイン重視であえて暗い色の生地にしたい」
デザインへのこだわりは重要ですが、傘は公共の場で使用するものであり、ご自身と他者への「安全性」が求められます。
なぜそのデザインは危険か?
デザインが安全性より優先されると、重大な事故につながるリスクがあります。
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SG基準(一般財団法人製品安全協会): 製品の安全性を認証する代表的な基準です。「SGマーク」がついた製品は、万が一の製品欠陥による人身事故に対して賠償措置が講じられます。特に乳幼児・子供用の製品(キッズ傘など)を開発する際は、この基準をクリアすることが強く推奨されます。
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PL法(製造物責任法): 製品の欠陥によって他者に損害を与えた場合、製造・販売した事業者が責任を問われる法律です。鋭利すぎる先端や、簡単に折れて人を傷つけるような骨は、この法律に抵触する可能性があります。
(※傘の業界基準は主に耐漏水性や強度といった「品質」に関する業界自主基準であり、ここでいう「安全」とは少し観点が異なります。)
安全基準を満たしていない製品は、メーカーとして製造をお断りせざるを得ません。
どうすればOK?
デザインを固める前に、まずは傘の「安全基準(SG基準など)」についてメーカーの意見を聞いてください。安全性を担保した上で、最大限のデザインの自由度を一緒に探っていくことが、安心して販売できる製品づくりの基本です。
まとめ
傘のOEMで失敗しないためには、傘を「アパレル雑貨」と「工業製品」の両方の側面で捉え、その特殊性を理解することが重要です。
今回ご紹介した5つの落とし穴は、事前に知っておけば必ず対策が可能です。
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生地持ち込み: 耐水・撥水・厚みの基準をクリアし、張りサンプルでお客様自身も確認する。
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骨の新規開発: 最低2年の期間と「数万本」の発注コミットメントを覚悟する。
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短納期: 最低でも6ヶ月~1年のスケジュールを確保する。
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コスト: 優先順位を決め、機能のトレードオフを検討する。
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安全性: デザインよりも安全基準(SG基準など)を優先する。
「できない」と諦める前に、「どうすれば実現できるか」をメーカーと相談することこそが、OEM成功への一番の近道です。専門知識が必要な部分は、ぜひ私たちのような信頼できるパートナーにお任せください。
Amvel(アンベル)では、傘の専門家として、お客様の熱意ある「こだわり」と「現実的な製造ライン」を丁寧にすり合わせ、最適なOEM/ODMプランをご提案します。
「この生地は傘に使える?」「こんな機能は実現可能?」といった初期段階のご相談も大歓迎です。豊富な実績に基づき、実現可能性と概算費用をスピーディーにお答えします。まずは一度、貴社のアイデアをお聞かせください。
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