工場初回訪問で「針管理」を最重要視する理由とは?製造現場の真実

こんにちは、amvel.net ブログ編集部、CEOの辻野義宏です。

私たちアンベルは、傘業界においてWebを通じた情報発信を積極的に行っています。特に私自身のnoteなどでは、ありがたいことに同業の方々からも温かいお声がけをいただく機会が増えました。

 

そのような発信をご覧になった中国などの工場関係者の方から、「ぜひうちの工場に見に来てください」とお誘いいただくことも少なくありません。中国出張の際は、可能な限り多くの新規工場さんを訪問させていただいています。これまでに100件以上の工場をこの目で見てきたと思いますが、これは私自身の新たな発見や学びの機会となっています。

 

この様々な工場を訪問する中で、私が初回訪問で最も重視し、徹底的にチェックしている点があります。それが、「針管理」です。一般の方々には馴染みがないかもしれませんが、傘という製品の安全性を担保する上で、この針管理は非常に重要な意味を持ちます。今回は、私たちが製品にかける思いと、製造現場の厳しい現実について、この「針管理」という切り口から深く掘り下げて解説します。


傘の製造現場の「安全基準」:なぜ針管理が最重要なのか

「まさか製品に針が?」と思われるかもしれません。しかし、ものづくりにおいて「異物混入」のリスクは常に存在し、特に傘の製造現場では、そのリスクを排除するための特別な配慮が必要になります。

傘製品に「検針機」や「X線」が使えないという宿命

なぜ傘の製造において針管理が難しいのか。その最大の理由の一つは、製品の構造にあります。

  • 一般的な衣料品
    ミシン針などの混入を防ぐため、最終工程で高性能な検針機(金属検出器)やX線検査機が用いられます。

  • 傘製品
    製品の根幹を支える「傘骨」は金属でできています。この金属骨があるため、検針機やX線検査機にかけても、傘骨自体に反応してしまい、針の有無を正確に判断することができません。

つまり、傘製品の検品においては、機械に頼ることができず、目視や触診といった人の手に頼らざるを得ない宿命を背負っているのです。だからこそ、製造工程の初期段階から、現場で針を絶対に散乱させないという、徹底した管理体制が求められます。

「製品に針が?」…安全への意識が低い工場の現実

針管理がずさんな工場を訪問すると、その意識の低さに驚かされます。工場内の至る所に、折れたミシン針の破片や、使用済みの針、時には新品の針が放置されている光景を目にすることがあります。もちろん、私たちはそうした工場とは一切取引を行いません。

 

なぜなら、現場の管理が甘いということは、いつ、どのような形で、それらの針が製品に紛れ込んでしまうかわからないという、致命的なリスクを抱えていることを意味するからです。針が製品に混入することは、お客様の安全を脅かす重大な事故に直結します。この安全性の追求こそが、ものづくりに携わる企業の最優先事項であるべきだと強く感じています。

このように針が放置されている
このように針が放置されている

ほとんどの工場が抱える「ずさんな針管理体制」の実態

安全の重要性を工場側に伝えても、残念ながら多くの工場では形だけの針管理に留まっているのが現実です。

形だけの「針管理」:帳票と現場の不一致

新規取引を検討する際、私たちは必ず「針管理規定」や「針交換記録」などの帳票(記録書類)を確認します。しかし、この帳票上の数字と、実際の現場の状況が合わないことは日常茶飯事です。

  • 交換した針の数が記録と合わない

  • 折損した針の破片がすべて回収されていない

  • 使用済みの針が鍵のかかる管理場所に保管されていない

帳票が完璧に整っていても、現場の床に針が落ちていれば意味がありません。このような状況は、管理体制が形骸化しており、実効性のある管理がなされていないことの明確な証拠です。

私は、こうした管理の甘さは、工場で働く人々の安全をも軽視している態度だと感じざるを得ません。

理念の欠如:「なぜ製品に針が入ってはいけないのか?」の答え

なぜ多くの工場で針管理がずさんになるのでしょうか。その根源は、工場経営者や工場管理者の「理念」の問題だと私は強く感じています。初回訪問時に工場経営者に「なぜ製品に針が入ってはいけないのか?」と問いかけると、明確かつ即座に答えられる方は意外と少ないのです。「不良品になるから」「お客様に怒られるから」といった、表層的な回答が大半です。

 

私たちが追求する答えは一つです。

「お客様の安全を第一に守るため、そして製品には携わった人々の魂が宿るものだから。」

 

目先の利益や「売れれば何でもよい」という考え方では、この徹底した安全管理は実現できません。製品を作るということは、その製品を通じてお客様の生活に安心と安全を届けることであり、その過程において、一切の妥協を許さない倫理観と哲学が必要なのです。


信頼できる工場を見抜く:経営者が持つべき「製品への魂」

私が100件以上の工場を訪問してきて確信したこと。それは、信頼できる工場は、技術力だけでなく、経営者の「倫理観」と「哲学」で決まるということです。初回訪問で針管理を厳しくチェックするのは、単に針が落ちていないかを確認するためだけではありません。

 

それは、その工場全体の「品質への意識の高さ」と、「従業員への配慮」、そして何よりも「製品に対する敬意」を測るための、最も分かりやすい指標なのです。徹底した針管理が行われている現場は、必然的に整理整頓され、従業員の意識も高く、結果として不良率も低い傾向にあります。

 

私たちが革新的な機能を追求し続けるのは、最先端の技術を駆使するだけでなく、この「お客様の安全は絶対」という見えない部分のこだわりを徹底しているからこそです。製品の安全性は、最終的に、それを作る経営者や管理者が持つ「製品への魂」から生まれるのです。

まとめ

今回は、傘の製造における「針管理」の重要性とその厳しい実態について、私の経験に基づきお話ししました。傘は、骨があるという構造上、検針機に頼れず、製造現場の徹底した管理と、それを支える経営者の安全への「理念」が不可欠です。

 

アンベルでは、時代によって変化する最高の傘をお届けするために、この「見えない安全への徹底したこだわり」をこれからも追求し続けます。お客様に長く、安心してお使いいただける製品をお届けすることが、私たちの使命です。ぜひ、この機会にアンベルの製品ラインナップもご覧ください。


<執筆者:辻野義宏> アンベル株式会社 CEO。30年以上に渡って傘の開発および研究を続けている。革新的な機能を追求し続ける日本の傘ブランド「AMVEL (アンベル) 」では、時代によって変化するベストを追求し、最先端の技術を駆使した傘をお届けしています。