傘OEM、今から日傘を作るには遅い?成功するための1年計画

最近、ありがたいことにOEM(オリジナル傘の製造)に関するお問い合わせが増えています。特に、昨今の猛暑や男性の日傘需要の高まりもあってか、「オリジナルの日傘を作りたい」というご相談を数多くいただいております。

しかし、ご相談いただくタイミングと、実際の製造スケジュールの間には、大きなギャップがあることが少なくありません。

「夏に向けて販売したいので、今からお願いしたい」

そうおっしゃっていただくことが多いのですが、傘の専門家として、正直な現状をお伝えしなければなりません。 今から企画をスタートしても、納品は早くても6月頃になります。

今回は、なぜ傘作りにはそれほど時間がかかるのか、工場のリアルな裏側と、成功するためのスケジュール感についてお話しします。

今の時期から相談しても、納期は「6月」が最短?

現在、傘の生産工場は繁忙期に突入しています。 私たちメーカー側も、新商品の開発やサンプルの作成を進めていますが、工場が混み合っているため、思ったようなスピードで進まないのが実情です。

この状況下で、今から新規のOEM企画を立ち上げ、サンプルを作成し、本生産に入った場合、納期はどんなに早くても「6月くらい」になります。

「6月なら梅雨や夏に間に合うのでは?」と思われるかもしれません。しかし、この「6月」というのは、あくまで「ある程度のベース(型や仕様)が決まっていて、スムーズに進んだ場合」の最短ケースです。

全くのゼロベースから、新しい形状や特別な生地を使って作り上げていくような案件の場合、さらに時間がかかります。そうなると、夏の販売商戦のピークに納品が間に合わないリスクが非常に高くなってしまうのです。

「傘ってそんなに時間がかかるの?」にお答えします

お客様とお話ししていると、「傘を作るのに、どうしてそんなに時間がかかるのですか?」と驚かれることがよくあります。 Tシャツなどのアパレル製品と比べると、傘の製造工程は複雑で、多くの部材を必要とするためです。

実質の生産期間は3〜4ヶ月だが、それは「全てが決まってから」の話

一般的に、傘の実質的な生産期間は3〜4ヶ月程度と言われています。 しかし、これは工場に「GOサイン」を出してから完成するまでの期間です。つまり、以下の条件がすべてクリアになってからの話なのです。

  • 仕様の確定: 骨の構造、サイズ、ハンドルの形状などが決まっている。

  • ビーカー(色出し)の確定: 生地の染色見本が上がり、色が承認されている。

  • 品質の確定: 強度や機能性の基準を満たしていることが確認されている。

これらが決まっていない段階では、工場のラインに乗せることはできません。

ベースがない企画は「サンプル作成」だけで1〜2ヶ月

もし、ベースとなるモデルがなく、「こんな傘を作りたい」というアイデアからスタートする場合、まずはサンプル(試作品)を作る必要があります。

  • 最適な骨の選定

  • 生地の手配と色合わせ

  • パーツの組み合わせ

これらを調整し、サンプルを1回作成するだけでも、現在のような繁忙期では軽く1〜2ヶ月はかかってしまいます。 修正が入れば、その倍の時間がかかります。ここをショートカットしようとすると、使い勝手が悪い傘や、強度が不足した傘ができあがってしまい、結果としてブランドの信用を損なうことになりかねません。

日傘ブームの追い風で、工場のキャパシティは限界に

ここ数年、男女問わず日傘を使う文化が定着し、日傘ブームとも言える状況が続いています。これは業界にとって非常に喜ばしいことですが、一方で工場のキャパシティは常に一杯の状態です。

世界的に見ても良質な傘を作れる工場の数は限られています。 そこに注文が殺到しているため、どうしても「待ち」の時間が発生します。無理に急がせて割り込もうとすれば、検品がおろそかになったり、縫製が雑になったりと、品質トラブルに直結します。

アンベルでは「品質」を最優先事項としているため、無理な短納期での製造はお勧めしていません。

高品質な日傘を作るなら「1年スパン」で計画を

「今年の夏に売りたい」という熱い想いは大変よく理解できます。しかし、焦って作った商品は、長く愛される商品にはなりにくいものです。

もし、これからこだわりの日傘の生産やOEMを検討されているのであれば、「1年スパン」くらいのつもりで取り組んでいただくことを強く推奨します。

例えば、今から動き出すのであれば、「2026年の夏」ではなく「2027年の春の発売」をターゲットにするのです。そうすれば、以下のようなメリットがあります。

  • じっくりと仕様を検討し、納得のいくサンプルを作ることができる。

  • 工場の閑散期をうまく利用して、コストや納期をコントロールしやすくなる。

  • 発売前のプロモーション準備に十分な時間を割くことができる。

「急がば回れ」という言葉通り、長い目で見た計画こそが、結果としてお客様に喜ばれる「良い傘」を生み出す最短ルートとなります。

まとめ

  • 現在の工場状況: 繁忙期によりサンプルの進捗も遅れ気味。

  • スケジュールの現実: 今から動いても最短で6月納品。ゼロベースならさらに時間がかかる。

  • 時間の内訳: 生産に3〜4ヶ月、その前の仕様決定やサンプル作成に数ヶ月が必要。

  • アドバイス: 日傘ブームで工場は手一杯。1年スパンで計画を立てるのが成功の鍵。

傘作りは、想像以上に奥が深く、時間のかかるものづくりです。だからこそ、完成した時の喜びもひとしおです。 これからオリジナル傘を作りたいとお考えの方は、ぜひ余裕を持ったスケジュールで、私たちと一緒に「長く愛される良い傘」を作っていきましょう。


<執筆者:辻野義宏> アンベル株式会社 CEO。30年以上に渡って傘の開発および研究を続けている。革新的な機能を追求し続ける日本の傘ブランド「AMVEL (アンベル) 」では、時代によって変化するベストを追求し、最先端の技術を駆使した傘をお届けしています。