新年あけましておめでとうございます。アンベル株式会社の辻野です。
2026年の幕開けは、まさに「予測不能」という言葉がふさわしいものとなりました。1月初旬、米軍によるベネズエラへの軍事介入「アブソリュート・リゾルブ作戦」が報じられ、世界中に緊張が走っています。
こうした地政学リスクのニュースを聞くと、真っ先に「原油が高騰し、傘のコストも上がるのでは?」と心配されるかもしれません。しかし、2026年の経済は少し複雑な動きを見せています。今、私たちが手に取る一本の傘の裏側で、一体何が起きているのか。商品開発や流通のヒントとなる「3つのリアル」をお伝えします。
1. 原油安のメリットを消し去る「物流コストの高止まり」
普通、戦争や軍事介入が起きれば石油の価格は跳ね上がります。しかし、今回のベネズエラ情勢を受けても、原油価格は50ドル台と意外なほど落ち着いています。世界的な供給過剰が、地政学リスクによる値上がりを打ち消しているのです。
しかし、だからといって「傘が安くなる」わけではありません。最大のネックは、物流費が利益を削る構造にあります。
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「単価」に対して重い「物流費」: 傘は比較的リーズナブルな商品ですが、1本あたりにかかる国際輸送費や国内運賃の割合は、決して無視できるものではありません。原油価格が下がっても、人件費や管理費を含む「物流基本料金」は高止まりしています。
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航路の迂回による「時間のコスト」: 紅海情勢の不安定さが2026年現在も続いており、航路の迂回が常態化しています。これにより、運賃そのものだけでなく「納期が読めない」「在庫回転率が落ちる」といった見えないコストが、原油安の恩恵をかき消してしまっているのです。
2. 拠点は移っても、傘の心臓部は「中国」にある
傘の主要な生産拠点では、現在、単なる景気の良し悪しを超えた「構造的な変化」が起きています。
縫製はカンボジア、原材料は中国という構造
近年、コストを抑えるために「縫製工程」はカンボジアなど東南アジアへ移りつつあります。しかし、傘の品質とコストの要である「生地」や「ハンドル・骨(樹脂)」といった原材料の生産は、依然として中国が圧倒的なシェアを握っています。
つまり、縫製地がどこであれ、原材料の供給元である中国国内の情勢から逃れることはできません。
中国工場の「ごまかし」が効かない時代に
原材料を支える中国の工場では、最新の税務監視システム(金税四期)が本格稼働し、AIが工場の銀行口座と給与支払いを完全に把握するようになりました。これまで曖昧にされてきた社会保険料の支払いが厳格化され、それが「ハンドル・骨・生地」といったあらゆる部材の価格底上げに直結しています。
3. 「PFAS(永遠の化学物質)規制」がもたらす新たなハードル
今年、商品に関わる皆様が最も意識しなければならないのが、欧米で本格化した環境規制です。
特に「PFAS(ピーファス)」と呼ばれる有機フッ素化合物への規制は、傘の「撥水加工」を根本から変えています。フランスでは今年1月1日から、衣類や靴などへのPFAS使用が禁止され、米国でも同様の動きが加速しています。
これまでの強力な撥水剤が使えなくなる中で、「環境に優しく、かつ高性能な代替素材」をいかに確保するか。この対応の早さが、2026年の商品の価値を左右することになります。
まとめ:2026年に「選ばれる傘」を作るために
2026年の傘づくりは、派手な世界情勢に惑わされず、以下の「足元の変化」にしっかり対応することが成功のカギとなります。
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「届くまでのコスト」を再計算する: 原油価格よりも、物流ルートの停滞による「見えない損失」を警戒すべきです。
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サプライチェーンの全体像を見る: 縫製地だけでなく、中国の原材料供給リスク(社会保険徴収によるコスト増)まで目配りする必要があります。
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「環境対応」を標準装備に: PFASフリーなどの環境性能は、もはや「あれば良い」ではなく、市場に出るための「必須条件」になりつつあります。
世界が激動する今だからこそ、一時的な価格に振り回されない「本質的な価値」を持つモノづくりが求められています。アンベルは、経験と最新のファクトを武器に、変化の時代を共に歩むパートナーであり続けたいと考えています。
<執筆者:辻野義宏> アンベル株式会社 CEO。30年以上に渡って傘の開発および研究を続けている。革新的な機能を追求し続ける日本の傘ブランド「AMVEL (アンベル) 」では、時代によって変化するベストを追求し、最先端の技術を駆使した傘をお届けしています。noteでも執筆中。
