日々の生活の中で、食料品や電気代の値上げを実感する場面が増えていますが、実はその影響は「傘」の世界にも静かに、しかし確実に忍び寄っています。
特に、私たちが手がけるような「軽量で丈夫な傘」において、メイン素材となるアルミ(アルミニウム)の価格高騰が大きな課題となっています。
「なぜ今、傘の素材が値上がりしているのか?」「今後の価格はどうなるのか?」 今回は、30年以上傘の開発に携わってきた専門家の視点から、アルミを巡る現状と、私たちが直面している製造現場の裏側について正直にお伝えします。
なぜ今、アルミの価格が上がっているのか?
傘の親骨や中棒(シャフト)にふんだんに使われるアルミ。その価格が決まる背景には、世界規模の経済状況が深く関わっています。
LME(ロンドン金属取引所)の価格変動とエネルギーコスト
アルミの国際価格は、主にLME(ロンドン金属取引所)での取引価格に左右されます。近年、地政学的なリスクや世界的なインフレにより、この価格が高止まりしています。
さらに重要なのが「エネルギーコスト」です。アルミは「電気の缶詰」と呼ばれるほど、精錬(原料から地金を作る工程)に膨大な電力を消費します。世界的なエネルギー価格の上昇が、そのままアルミ地金のコストを押し上げているのです。
他業界との需要の奪い合い
電気自動車(EV)の軽量化や、建築資材、太陽光パネルのフレームなど、脱炭素社会に向けたアルミの需要は世界中で急増しています。傘業界は、これら巨大な市場と同じ「アルミ」という資源を取り合っている状況にあります。
アルミだけではない「加工賃」の上昇
傘に使用するアルミは、単なる棒や管ではありません。傘としての機能を果たすためには、「アルマイト加工(陽極酸化処理)」という表面処理が不可欠です。実は今、この加工現場でもコストが急騰しています。
アルマイト加工とは?
アルマイト加工とは、アルミの表面に人工的な酸化皮膜を作る処理のことです。これにより、以下の効果が得られます。
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耐食性の向上(錆びにくくなる)
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耐摩耗性の向上(傷がつきにくくなる)
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美観の維持(高級感のある質感を生む)
加工コスト増の要因
このアルマイト加工の工程では、多くの「化学薬品」と「電力」を使用します。
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薬剤の値上がり: 加工に使用する酸やアルカリ、着色剤などの価格が上昇しています。
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環境対策コスト: 加工時に出る廃液を適切に処理するための費用も、規制の強化とともに増大しています。
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人件費の上昇: 製造現場における深刻な人手不足により、加工賃そのもののベースアップが続いています。
今後の見通し:春節明け以降の価格について
読者の皆様にとって最も気になるのは「いつから価格に影響するのか」という点ではないでしょうか。
結論から申し上げますと、今後の新規発注分、あるいは春節(旧正月)明け以降の生産分からは、製品価格の値上がりが予測される状況です。
多くの傘工場が集積する地域では、春節を境に年間の契約や賃金の見直しが行われます。現在の在庫分については現行価格を維持できるよう努めておりますが、これからの新規生産分については、素材・加工の両面でのコスト増を吸収しきれないのが実情です。
まとめ:妥協しないモノづくりのために
アルミの価格高騰は厳しい状況ではありますが、私たちは「安くするために品質を落とす」という選択肢は持っていません。
傘は、雨や風からあなたを守る大切な道具です。アルミの質を落としたり、アルマイト加工の手間を省いたりすれば、傘はすぐに壊れ、錆びてしまいます。
これからも「AMVEL」は、適正な価格で、最先端の技術と最高の素材を用いた、「長く愛着を持って使い続けられる傘」をお届けし続けることをお約束します。
<執筆者:辻野義宏> アンベル株式会社 CEO。30年以上に渡って傘の開発および研究を続けている。革新的な機能を追求し続ける日本の傘ブランド「AMVEL (アンベル) 」では、時代によって変化するベストを追求し、最先端の技術を駆使した傘をお届けしています。noteでも執筆中。
