「5秒でたためる」「一瞬で整う」
ネット広告で見かけるこれらの魅力的なキャッチコピーを信じて買ったのに、届いた傘はシワだらけ。
結局、一枚ずつ手で折り目を整え直した……そんな経験はありませんか?
傘の開発に30年以上携わってきた私から見れば、現在の市場は「優良誤認」を招きかねない、根拠なき言葉が溢れていると感じます。
形状記憶の寿命を決めるのは「糸の品質」
「形状記憶」の実態は、熱によるプリーツ加工(熱セット)です。しかし、どれだけ強くプレスしても、ベースとなる「形状記憶糸」の質が悪ければ、雨に濡れ、開閉を繰り返すうちに生地が柔らかくなり、折り目は簡単に消えてしまいます。
安価な形状記憶傘の多くは、この「素材の質」が伴っていないため、数回使えばただのシワシワの傘に戻ってしまいます。広告の「秒数」だけを信じてしまうと、こうした品質の罠に陥ってしまうのです。
アンベルの挑戦。感覚ではなく「数値」で証明する
私たちアンベルも、究極のたたみやすさを追求した新製品 「TOUGHNESS 秒速プリーツ」 を開発しました。しかし、私たちは単に「〇秒で畳めます」と謳うだけでは不十分だと考えました。なぜなら、その秒数は使う人の慣れや環境に左右されてしまうからです。
そこで挑んだのが、「たたみやすさをエビデンスで表示する」という傘業界において日本初の試みです。具体的には、本来は衣服(スカートのプリーツなど)の性能を測るための厳しい規格 「JIS L 1060 プリーツ保持性試験」 を、傘の生地評価として応用しました。
500回開閉しても「保持率100%」という事実
試験の結果は驚くべきものでした。傘の激しい開閉を500回繰り返した後の生地を検査したところ、プリーツ保持率は100%(異常なし) という数値を叩き出したのです。
これは、「新品の時だけたたみやすい」のではなく、「使い続けても、濡れても、折り目がしっかりと残り続ける」 ことを、日本の公的規格に基づいた数値で証明したことになります。
ギフト・ショーで確信した、他社との圧倒的な差
このエビデンスの正しさは、現場での反応が証明してくれました。2月に開催された「ギフト・ショー」にて、多くのバイヤーや来場者の方々に、実際に「秒速プリーツ」を体験していただきました。
すでに他社の形状記憶傘を手に取ったことがあるお客様からも、
- 「他とは折り目のエッジ(鋭さ)が全く違う」
- 「これなら本当に、無意識にでも一瞬で畳めるね」
と、多くの驚きの声をいただいたのです。
データ上の「100%」という数値が、実際の「使いやすさ」としてプロの目にもはっきりと映った瞬間でした。
まとめ:魔法の言葉ではなく「エビデンス」を選んでほしい
「5秒」という魔法のような言葉は魅力的です。しかし、傘は長く使い続ける道具だからこそ、その言葉を支える「裏付けとなる技術」と「客観的なデータ」が不可欠です。
アンベルはこれからも、曖昧な表現で消費者を惑わすのではなく、数値と事実に基づいた「嘘のないものづくり」を徹底してまいります。
次にあなたが「たたみやすい傘」を探すときは、ぜひ「その折り目を証明するデータはあるか?」と問いかけてみてください。
<執筆者:辻野義宏> アンベル株式会社 CEO。30年以上に渡って傘の開発および研究を続けている。革新的な機能を追求し続ける日本の傘ブランド「AMVEL (アンベル) 」では、時代によって変化するベストを追求し、最先端の技術を駆使した傘をお届けしています。noteでも執筆中。
