傘のOEM(受託製造)を検討する際、多くの方が「コスト」と「品質」のバランスに頭を悩ませます。実は、その悩みを一気に解決する鍵は「発注のタイミング」にあります。
多くの傘工場には、年間を通じて劇的な「繁忙期」と「閑散期」の波が存在します。この波を逆手に取り、あえて工場が落ち着く時期に製造をぶつける「閑散期製造」こそ、賢い担当者が実践している戦略です。
今回は、なぜ7月〜9月の閑散期が狙い目なのか、そしてその時期に製造を行うことがどのようなメリットをもたらすのかを詳しく解説します。
なぜ「7月〜9月」の閑散期製造が狙い目なのか?
傘業界には特有のシーズンサイクルがあります。一般的に、梅雨や日差しの強まる春から夏にかけてが最大の商戦期となるため、工場の稼働状況もこれに大きく左右されます。
傘工場の年間スケジュールと稼働実態
多くの傘工場では、3月〜6月が超繁忙期となります。この時期は店頭に並ぶ商品の追加生産や、急な需要への対応でラインがフル稼働します。
一方で、7月〜9月にかけては「閑散期」に入る工場が少なくありません。もちろん工場によりますが、この時期は量産ラインに空きが出やすいタイミングなのです。
サンプル作成と量産ラインの「忙しさ」の違い
注意が必要なのは、7月〜9月であっても「サンプル室」は来シーズン向けの開発で忙しいという点です。しかし、実際に製品を仕立てる「量産ライン」は別です。大きなロットを動かすラインが空いているこの時期こそ、戦略的な発注が活きてきます。
閑散期に傘を製造する3つの大きなメリット
閑散期に製造を行うことは、単に空いている時期を利用する以上のメリットを、発注者と工場の双方にもたらします。
1. 価格交渉がスムーズに進みやすい
工場側にとって最大の懸念は「ラインを止めること」です。工員を雇用し続けるためには、仕事が途切れる時期を極力減らし、稼働を平準化(ならすこと)したいと考えています。
「ゆっくり生産してもいいので、この時期にラインを回してほしい」という提案は、工場にとって非常にありがたい話です。そのため、通常期よりもコスト面での相談(価格交渉)が柔軟に進みやすくなる傾向があります。
2. 丁寧な縫製と徹底した検品体制
「閑散期だと品質が落ちるのでは?」と心配されるかもしれませんが、実は逆です。繁忙期は納期に追われ、どうしても現場にプレッシャーがかかります。
一方、閑散期はスケジュールにゆとりがあるため、一つひとつの工程をより丁寧に行うことが可能です。縫製や検品の精度も落ち着いて確認できるため、結果として非常に品質の安定した仕上がりを期待できます。
3. 熟練工の定着を支え、持続可能なモノづくりに貢献
傘作りは熟練した職人の手に依存する部分が大きい産業です。仕事の量が安定しないと、優秀な工員が離職してしまうリスクがあります。
閑散期に仕事を提供し、工場の稼働を平準化させることは、工員さんの生活と雇用の安定に直結します。これは、長期的に見て「良い傘を作り続けられる環境」を守るという、サステナブルなモノづくりへの貢献にもつながるのです。
失敗しないためのスケジュール管理:3月〜5月の発注が鍵
閑散期(7月〜9月)に製造を完了させるためには、逆算したスケジュール管理が不可欠です。
- 発注時期の目安:3月〜5月
- 対象商品:来年も確実に販売を継続する「定番商品」
流行に左右されない定番アイテムであれば、早めに仕込んでもリスクは低く、むしろ「安く・高品質に・確実に」在庫を確保できる絶好のチャンスとなります。翌年の春の立ち上がりに向けて、秋口には手元に製品がある状態を作っておくのが理想的です。
まとめ
傘のOEMにおける「閑散期製造」は、発注者にとってはコストダウンと品質向上を実現し、工場にとっては雇用の安定につながる、まさに「三方良し」の戦略です。
-
7月〜9月の閑散期を狙ってラインを確保する。
-
そのために3月〜5月には発注を済ませる。
-
ゆとりある生産で高品質な定番品を仕上げる。
このサイクルを回すことで、御社の傘ビジネスの競争力は一段と高まるはずです。次回のコレクションや定番品の補充計画に、ぜひ「閑散期製造」を取り入れてみてはいかがでしょうか。
<執筆者:辻野義宏> アンベル株式会社 CEO。30年以上に渡って傘の開発および研究を続けている。革新的な機能を追求し続ける日本の傘ブランド「AMVEL (アンベル) 」では、時代によって変化するベストを追求し、最先端の技術を駆使した傘をお届けしています。noteでも執筆中。
