傘骨のサビ・変色を防ぐ!いま再確認すべき「めっき品質」の重要性

傘を開いたとき、骨に茶色いサビやどす黒い変色を見つけてガッカリしたことはありませんか?

近年、軽量なグラスファイバーやカーボンファイバー製の傘骨が増えていますが、強度やコストのバランスから、スチール(鉄)に「めっき(表面処理)」を施したパーツは依然として多くの傘で使用されています。

 

しかし、最近この「めっき」の品質について、不良の発生をぽつぽつと聞くようになりました。「以前よりサビやすくなった気がする」「新品なのに一部が黒ずんでいる」といった事象が、現場レベルで散見されるようになっています。

 

なぜ今、めっきの品質が不安定になっているのか。そして、長く愛用できる傘を作るために守るべき「真の品質基準」とは何か。30年以上傘の開発に携わってきた視点から解説します。

なぜ今、傘骨のめっき品質が落ちているのか?

かつて当たり前だった「高品質なめっき」が、今なぜ揺らいでいるのでしょうか。その背景には、世界の傘製造の拠点である中国の環境規制が深く関わっています。

中国の環境規制と工場の淘汰

めっき工程では多くの化学薬品を使用し、有害な排水が発生します。中国政府は環境保護のため、排水設備に不備がある工場の取り締まりを強化しました。その結果、基準を満たせない小規模なめっき工場が次々と閉鎖・廃業に追い込まれています。

製造現場の混雑と「作業の簡略化」

工場が減った一方で、傘の需要は減りません。生き残った優良な工場に注文が集中し、現場は常にパンク状態です。その結果、本来かけるべき「処理時間」や「洗浄工程」が疎かになり、結果として質の低いめっき製品が混入してしまうリスクが高まっています。

検査の盲点

めっきの質は、完成直後の見た目だけでは判断しにくいものです。そのため、出荷時の検品では見逃されやすく、数ヶ月保管した後や、消費者が数回使用した後にトラブルとして表面化するケースが目立ってきています。

【保存版】傘骨めっきの品質基準と試験方法

「質の高い傘」を提供し続けるためには、感覚値ではなく、数値に基づいた厳格な基準が必要です。以下に、私たちが重視しているJIS規格(日本産業規格)に準じた品質基準をまとめました。

1. めっき層の厚さ(膜厚)

めっきは、薄すぎるとすぐに剥がれ、内部の鉄が露出してサビの原因になります。

表面処理の種類 品質基準(厚さ) 試験方法
亜鉛めっき 3μm以上 かつ クロメート処理 JIS H 8610(7.2)による測定
それ以外 3μm以上 JIS H 8617(7.2)による測定

※ポイント: わずか3μm(0.003mm)という薄い膜ですが、この厚みを均一に保つことが耐久性の鍵となります。

2. 耐食性(サビにくさ)

塩水を使用した過酷な環境下で、変色やサビが起きないかを確認します。

  • 亜鉛めっきの場合:
    専用の試験液(塩化ナトリウム+酢酸+塩化銅)に1分間浸しても、「黒色にならないこと(黒変防止)」が条件です。
  • 塗装・その他の場合:
    5%の塩化ナトリウム水溶液に18時間浸した後、「サビの発生がないこと」を目視で確認します。

3. 膜の強さ(密着性)

傘は開閉時に骨がしなるため、めっきが柔軟に密着している必要があります。

  • めっきもの:
    親骨や受骨を90°に折り曲げても、めっきが剥がれないこと。
  • 塗装のもの:
    セロハンテープを密着させて急激に剥がしたとき、塗膜が剥がれないこと。

良い傘を見極めるために:メーカーが取り組むべきこと

「コスト削減」を優先しすぎるあまり、めっきの質を落とすことは、最終的にブランドの信頼を失うことにつながります。

 

傘は雨の中で使う道具です。濡れることが前提の製品において、サビや変色は致命的な欠陥といえます。私たちメーカー側ができることは、単に工場を信じるだけでなく、定期的な抜き打ち検査や、基準に満たない製品を徹底して排除する姿勢を改めて示すことです。

 

AMVEL(アンベル)では、こうした目に見えにくい細部こそが「傘の寿命」を決めると考え、最先端の技術と厳格な管理体制で製品づくりを行っています。

まとめ

傘骨のめっき品質は、製品の「安全性」と「美観」を支える土台です。

  • 中国の環境規制の影響で、めっき品質が不安定になりやすい現状がある。

  • 「3μm以上の膜厚」や「耐食性試験」といったJIS基準を再徹底する必要がある。

  • 目に見えない部分へのこだわりが、ユーザーの満足度(長く使えること)に直結する。

今一度、お手元の傘や取り扱い製品の「骨」に注目してみてください。細かなパーツひとつひとつの質が、ブランドの価値を決めるのです。


高品質な傘づくりや、耐久性の高いパーツ選定に関するご相談は、ぜひアンベル株式会社までお問い合わせください。30年の経験を活かし、最適なソリューションをご提案いたします。

 

<執筆者:辻野義宏> アンベル株式会社 CEO。30年以上に渡って傘の開発および研究を続けている。革新的な機能を追求し続ける日本の傘ブランド「AMVEL (アンベル) 」では、時代によって変化するベストを追求し、最先端の技術を駆使した傘をお届けしています。noteでも執筆中。