「傘を差しているのに、なぜか手元や腕に水が垂れてくる……」
そんな経験はありませんか?
傘の表面にはしっかり撥水が効いているのに、どこからか雨が侵入してくる。実はそれ、一般的な「雨漏り」とは少し違う「伝水(でんすい)」という現象かもしれません。
先日、社内でも「伝水って何ですか?」という質問を受けました。意外と知られていないこの言葉。今回は傘の専門家として、漏水との違いや原因、そして私たちが製品化の際に行っている厳しいチェック内容についてお話しします。
そもそも「漏水(ろうすい)」とは?
まず、広い意味での「漏水」について整理しましょう。文字通り、傘の内側に水が漏れてくること全般を指します。
主な原因は以下の2点です。
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縫い目からの侵入:
傘の生地を縫い合わせているミシン目から水が漏れるケース。これが最も多い原因です。 -
生地からの浸透:
稀なケースですが、生地自体の耐水圧が低い、あるいは劣化によって生地そのものを雨が通り抜けてしまうことがあります。
これらに対し、今回詳しく解説するのが「伝水」です。
傘の「伝水」は、中棒を伝う雨漏り
「伝水」は漏水の一種ですが、水が入ってくる場所が特定されています。
それは、傘のカバー(生地)の頂点部分です。
傘の先端にある「石突(いしづき)」周辺から水が侵入し、そのまま中棒(シャフト)を伝って傘の内部に落ちてくる現象を指します。
イメージとしては、家の屋根そのものから漏れるのではなく、「天井の照明の付け根からポタポタと雨漏りしてくる」ような状態に近いです。
なぜ「伝水」は発見しにくいのか?
実は、公的な「漏水試験」でも伝水は見落とされることがあります。
一般的な試験では、傘を水平に固定し、真上から霧状の水を降らせます。しかし、実際の雨は風で斜めに降ることもあれば、傘の角度も動きます。
真上からの水だけでは、石突と生地のわずかな隙間に水が溜まりきらず、中棒まで水が伝う現象が再現されにくい場合があるのです。そのため、試験データ上は合格でも、実際に使ってみると「あれ?漏れてくる」ということが起こり得ます。
伝水の原因と自分でできる対策
伝水の最大の原因は、「石突周辺とカバー生地の間に隙間があること」です。
折りたたみ傘の場合
折りたたみ傘の多くは、石突がネジ式になっています。
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原因:長年使用したり、開閉の振動でネジが緩んだりすると、そこに隙間が生まれます。
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対策:もし中棒から水が垂れてきたら、石突をキュッと締め直して見てください。これだけで直るケースが多々あります。
長傘の場合
長傘は、中棒がそのまま露出しているタイプや、樹脂製の石突を被せているタイプがあります。
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原因:製造時の取り付け精度の甘さです。わずかな隙間があるだけで、毛細管現象のように水が吸い込まれてしまいます。
プロのこだわり:0.5mmの隙間も許さない検品
私たちAMVEL(アンベル)では、この「伝水」を防ぐために独自の厳しい基準を設けています。
サンプル検品や量産時の検品では、まず石突周辺に爪を当て、生地との間に隙間がないか感触で確かめます。少しでも違和感があれば、「0.5mm厚のスチールゲージ」を差し込みます。
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ゲージが入れば「不合格(NG)」
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ゲージが入らなければ「合格」
0.5mmという、目視では見落としてしまいそうなわずかな隙間。しかし、このコンマ数ミリの差が、大雨の日に快適に過ごせるか、それとも不快な思いをするかの境界線になるのです。
まとめ
傘の雨漏りには、縫い目などから漏れる「漏水」と、頂点から中棒を伝ってくる「伝水」があります。
もしお気に入りの傘で中棒から水が垂れてきたら、まずは石突が緩んでいないかチェックしてみてください。そして、新しく傘を選ぶときは、先端部分がしっかり隙間なく作られているかを見てみるのも、良い傘選びのポイントです。
私たちはこれからも、0.5mmの隙間にも妥協せず、皆さまが雨の日を安心して過ごせる製品をお届けしていきます。
<執筆者:辻野義宏> アンベル株式会社 CEO。30年以上に渡って傘の開発および研究を続けている。革新的な機能を追求し続ける日本の傘ブランド「AMVEL (アンベル) 」では、時代によって変化するベストを追求し、最先端の技術を駆使した傘をお届けしています。noteでも執筆中。
