最近、日傘を選ぶ際のキーワードとして「遮熱」や「遮熱率」という言葉をよく見かけるようになりました。実際、当サイトへのアクセスもこれらのワードで検索して来られる方が急増しています。
「数値が高いほど涼しいはず」と思われがちな遮熱日傘ですが、実は数値だけを見て選ぶと、「重くて持ち歩かなくなった」「思ったより涼しくない」といった失敗を招くこともあります。
今回は、傘の開発に30年以上携わってきた専門家の視点から、日傘における遮熱の正体と、本当に快適な1本を選ぶためのポイントをわかりやすく解説します。
日傘における「遮熱」とは?仕組みと測定方法
近年、各メーカーが「涼しさ」を追求するために技術開発を競っているのが、この遮熱機能です。
遮熱率は「熱を遮る力」の指標
遮熱とは、文字通り「熱を遮断すること」を指します。日傘においてこれは遮熱率という数値で測定され、この数値が高いほど、太陽の熱をブロックする力が強いといえます。
生地の加工が熱をブロックする
一般的な傘の生地だけでは熱を通してしまいますが、日傘に遮熱機能を持たせるために、主に以下のような加工が施されています。
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フィルム・コーティング:
生地に特殊なフィルムを貼ったり、ポリウレタンコーティングを施すことで、物理的に熱の侵入を防ぎます。これが現在の主流です。 -
遮熱素材の練り込み:
糸そのものに熱を遮る成分(チタンなど)を練り込んだ生地もありますが、コストや性能のバランスから、まだ一般的とは言えません。
現在のマーケットでは、後加工(フィルムやコーティング)によって高い遮熱率を実現しているものがほとんどです。
色によって遮熱率は変わる?「黒=涼しい」の誤解
「日傘は黒の方が涼しい」という説を耳にしたことがあるかもしれませんが、ここで「紫外線対策」と「暑さ対策」を分けて考える必要があります。
「紫外線カット」なら黒が有利
「日傘は黒」と言われる最大の理由は、黒色が紫外線を吸収し、透過を防ぐ力が強いためです。UVカット率を重視するなら、黒は非常に優れた選択肢です。
「遮熱(涼しさ)」なら白・シルバー系が有利
一方、遮熱率の数値だけを見れば、白やシルバー系の方が高い傾向にあります。
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白・シルバー系:
太陽光を反射しやすいため、熱を跳ね返し、数値が高く出やすい。 -
黒・ダーク系:
熱を吸収しやすいため、白に比べると数値上は遮熱率が低くなることが一般的。
しかし、黒だから熱いというわけではありません。私の経験では、遮熱率が35%程度あれば十分に効果を実感できます。数値の数パーセントの差よりも、次に説明する「物理的な条件」の方が体感温度には大きく影響します。
数値だけでは分からない「体感温度」を決める盲点
遮熱率の高さが、そのまま「涼しさの感動」に直結しないのには、明確な理由があります。
傘の生地と頭の「距離」が涼しさを左右する
これが最も重要なポイントです。遮熱日傘は、熱をブロックする一方で、生地そのものが熱を蓄えて熱くなるという性質を持っています。
そのため、傘を低く差して頭と生地の距離が近すぎると、生地からの輻射熱(ふくしゃねつ)を感じてしまい、涼しく感じられない場合があるのです。
遮熱率55%なら劇的に涼しい、とは限らない
仮に遮熱率が35%から55%に上がったからといって、体感温度が劇的に変わるわけではありません。数値の高さだけにこだわりすぎず、実際に差した時の圧迫感や、風の通りやすさも考慮することが大切です。
ここで、数値の捉え方について興味深い事例をご紹介します。
【事例】生地と製品でこれだけ違う!試験結果の差
アンベル社の「TOUGHNESS(タフネス)」という商品で行った試験では、以下のような結果が出ています。
| 試験項目 | Sand White(白系) | Black(黒系) | 数値の差 |
| 生地の遮熱率試験 | 55.0% | 35.0% | 20.0% |
| 製品の遮熱効果率試験 | 88.0% | 84.6% | 3.4% |
この結果からわかる通り、生地単体の試験では20%もの大きな差がありますが、傘としての製品試験ではわずか3.4%の差しかありません。
なぜ製品になると差が縮まるのか?
その理由は「試験環境」の違いにあります。
- 遮熱率試験(生地): 空気がこもった密閉に近い環境で行われます。
- 遮熱効果率試験(製品): 一定程度、開放された空間で行われます。
実際の日傘の使用シーンは屋外であり、常に空気が流れています。つまり、製品としての試験結果(遮熱効果率)の方が、より実際の使用感に近いと言えるのです。
「生地の数値が20%も違うから、白の方が圧倒的に涼しいはずだ」と数字だけで判断してしまうと、実情を見誤る可能性があります。日常生活においては、3.4%程度の微細な差よりも、色やデザインの好み、持ち運びのしやすさを優先しても、遮熱性能において大きな損をすることはないのです。
遮熱性能を高めることによる「デメリット」も知っておこう
高性能を求めすぎると、使い勝手が犠牲になることもあります。
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重さと厚み:
遮熱率を高めるためにフィルムを厚くしたり多層コーティングをしたりすると、どうしても生地が厚くなります。その結果、「傘が重くなる」「たたみにくくなる」といったデメリットが生じます。 -
バランスが大事:
毎日持ち歩く日傘にとって「軽さ」は正義です。遮熱性能と携帯性のバランスを見極めるのが、賢い選び方といえます。
知っておきたい「遮熱率」と「遮熱効果率」の違い
最後に、少し専門的なお話ですが、日傘の試験には2つの指標があります。
アンベルでは、お客様に安心してお使いいただけるよう、生地単体だけでなく製品としての検査も両方実施しています。
まとめ:数値と使い心地のバランスを
「遮熱率」は日傘の涼しさを測る大切な目安ですが、数字がすべてではありません。
- 紫外線対策なら黒、数値上の遮熱なら白・シルバーが強い。
- 遮熱率は35%程度あれば一定の効果は期待できる。
- 数値よりも、傘を差す位置(頭との距離)や毎日使える軽さなのかを意識する。
これらを意識するだけで、夏のお出かけはぐっと快適になります。ぜひ、あなたにとってベストなバランスの1本を見つけてください。
<執筆者:辻野義宏> アンベル株式会社 CEO。30年以上に渡って傘の開発および研究を続けている。革新的な機能を追求し続ける日本の傘ブランド「AMVEL (アンベル) 」では、時代によって変化するベストを追求し、最先端の技術を駆使した傘をお届けしています。noteでも執筆中。
