折りたたみ傘の中棒、太さの順序が2種類あるのはなぜ?

折りたたみ傘の「中棒(シャフト)」。伸縮させるために何段かに分かれていますが、じっくり観察したことはありますでしょうか。

実は、製品によって「ハンドル側が太くて、石突(先端)側が細いもの」と、逆に「石突側が太くて、ハンドル側が細いもの」の2種類が存在します。

単なるデザインの違いに見えるかもしれませんが、ここには傘の「持ちやすさ」や「頑丈さ」を大きく左右する、深い設計思想の違いが隠されています。今回は、知っていると傘選びがもっと納得のいくものになる、中棒の太さの順序に隠されたメカニズムを解説します。

1. ハンドル側が太いタイプ:日本主流の「優れた手元の安定感」

ハンドル側が太いタイプ
ハンドル側が太いタイプ

日本の折りたたみ傘市場で古くからスタンダードとされているのが、ハンドル側が太く、石突側に向かって細くなっていくタイプです。

◆ メリット:手元でのグラつきを感じにくい「安定感」

この構造の最大のメリットは、「中棒の太い方がハンドルに近いこと」です。手が直接触れて傘を支える根元のシャフトが一番太いため、傘を差したときに手元でのブレやグラつきを感じにくく、ピタッと決まるような心地よい「安定感」が生まれます。お店で傘を開いて持った際、手のひらにしっくりと馴染み、「持ちやすい」と感じやすいのはこのタイプです。

◆ デメリット:開いたときの「カバー全体のグラつき」

一方で、構造上の弱点もあります。傘を開いた際、骨を支える下側のパーツ(ろくろ)は、中棒の「細い部分」へとスライドして固定されます。そのため、どうしても中棒とパーツの間にわずかな隙間が生まれ、カバー全体が風にあおられたときにグラグラと揺れやすくなってしまうのです。

2. 石突側が太いタイプ:ヨーロッパ主流の「高い耐久性・耐風性」

石突側が太いタイプ
石突側が太いタイプ

一方で、ドイツを中心としたヨーロッパの傘に多く見られるのが、石突側が太く、ハンドル側に向かって細くなっていくタイプです。日本でも機能性商品はこちらのタイプが増えています。

◆ メリット:隙間のない「強固なホールド感」

傘を開ききったとき、パーツ(ろくろ)は中棒の一番太い部分でがっちりと固定されます。隙間が限界までなくなるため、風を受けてもパーツがブレず、カバー全体が圧倒的にグラつきにくい構造(高い耐風性)を作ることができます。頑丈さやタフな使用環境を想定した設計思想と言えます。

◆ デメリット:ハンドル側の心許なさ

このタイプは、ハンドル側に向かって中棒が細くなっていくため、傘を握って支える根元部分に、視覚的・感覚的な心許なさを感じる場合があります。

まとめ:傘のコンセプトは「中棒の向き」に現れる

折りたたみ傘の中棒の太さの順序は、その傘が「手元の安定感や持ちやすさ」を追求しているのか、あるいは「全体としての絶対的な頑丈さ」を追求しているのかという、設計コンセプトそのものです。

  • ハンドル側が太い傘: 日常使いでの持ちやすさや、手元がブレない安定感を重視する方に。
  • 石突側が太い傘: 悪天候や突風にも負けない、全体の安心感を重視する方に。

【補足】

ボタン一つでワンタッチ開閉する「自動開閉傘」は、中棒の内部に強力なバネを仕込む構造上、その仕組みの特性からすべて「石突側が太い傘」に分類されます。

 

新しく折りたたみ傘を選ぶ際は、ぜひこの「中棒のメカニズム」も意識してみてください。デザインや重量の数値だけでは見えてこない、その傘が持つ本来の強みや個性を知る、面白いヒントになるはずです。


<執筆者:辻野義宏> アンベル株式会社 CEO。30年以上に渡って傘の開発および研究を続けている。革新的な機能を追求し続ける日本の傘ブランド「AMVEL (アンベル) 」では、時代によって変化するベストを追求し、最先端の技術を駆使した傘をお届けしています。noteでも執筆中。