特殊な形状の傘は作れる?OEM開発で直面する「構造の壁」と失敗しない相談のコツ

近年、デザイン性の向上や他社との差別化、あるいは新しい機能性を持たせるために、「これまでにない特殊な形状の傘を作りたい」という企画やお問い合わせをいただく機会が非常に増えています。

 

アニメやゲームのキャラクターが持っているようなデザイン、ブランドのアイコンを模したユニークなシルエットなど、自由な発想の傘はどれも魅力的です。

 

しかし、いざ形にしようとすると「構造的に問題があって作れない」「サンプルはできても量産を断られてしまった」という結果になるケースも少なくありません。

 

実は、特殊な形状の傘をビジネスとして成功(量産化)させるには、一般的な傘とは全く異なるアプローチが必要です。今回は、傘開発のプロの視点から、特殊な傘が抱える「構造の壁」と、開発を失敗させないための「正しい相談方法・スケジュール感」について解説します。

なぜ「特殊な形状の傘」は量産化が難しいのか?

「デザイン画があるのだから、その通りに作ればいいのでは?」と思われるかもしれません。しかし、傘という製品の特性上、そこには高いハードルが存在します。

1. 傘としての基本性能(構造・耐久性)の問題

傘は単なる装飾品ではなく、「強い風雨に耐え、人を濡らさないようにする」ための精密な構造物です。

三角形や星型、あるいは極端に左右非対称な形状などは、骨にかかる力のバランスが均等になりません。その結果、以下のような問題が発生しやすくなります。

  • 強風が吹いたときに特定の部位だけがあっさり折れてしまう
  • 生地の張り方に無理が生じ、縫い目や隙間から雨漏りしてしまう
  • 傘を綺麗に閉じることができない(畳めない)

「傘としての機能」を果たせないものは、どれだけデザインが優れていても製品化することはできません。

2. 量産化(製造ライン)における壁

手作業でじっくり時間をかければ、世界に1本だけの「試作品(サンプル)」を作ることは可能かもしれません。しかし、それを数百本、数千本と「均一な品質で、安定したコストで製造する(量産化)」となると話は別です。

 

特殊すぎる形状は工場の既存の設備や製造ラインに乗せられず、すべての工程を手作業に頼らざるを得なくなります。そうなると、製造コストが跳ね上がるだけでなく、不良率も高くなり、結果として「量産受注ができない(ビジネスとして成り立たない)」という結論に至ってしまうのです。

理想を形にするために!失敗しない傘開発の「相談方法」

では、特殊な傘の企画は諦めるしかないのでしょうか?決してそんなことはありません。専門メーカーへの「相談の仕方」を変えるだけで、実現の可能性はグッと高まります。

最初から仕様(図面やサイズ)を決め込まない

よくある失敗パターンが、自社内でサイズや生地の裁断図面までカチカチに仕様を決め込んでから相談に持ち込まれるケースです。

前述の通り、傘には構造上のルールがあるため、完成された図面を見せられても「この仕様では構造的にNGなので対応できません」とお断りせざるを得ないケースが増えてしまいます。

まずは「概念的な要望(やりたいこと)」を伝える

おすすめなのは、仕様を決める前の段階で「概念的な要望(大枠のイメージや、実現したいこと)」をそのままお伝えいただく方法です。

  • 「こういう世界観を表現したい」
  • 「ここの部分にボリュームを持たせたい」
  • 「こういう新しい機能を持たせたい」

このように、まずはフワッとした要望のままで構いません。最初にコンセプトを共有していただければ、私たち傘のプロが「そのイメージを保ちつつ、傘の構造として破綻しない代替案や改善策」を一緒に検討し、可否を判断することができます。

特殊な傘の開発には「余裕を持ったスケジュール」が不可欠

もうひとつ、特殊な案件で非常に重要なのが「スケジュール感」です。

サンプル作成には相応の時間(リソース)がかかる

一般的な形状の傘であれば、既存のパーツ(骨や手元)を組み合わせて比較的スムーズにサンプルを作ることができます。

しかし、特殊な形状の場合は、ゼロベースでの型起こし、構造の計算、試作しては修正する…という試行錯誤のプロセスが不可欠です。そのため、サンプルを1本作成するだけでも、相応の時間(数ヶ月単位)がかかります。

量産化までの逆算スケジュールを持っておくことの大切さ

「来月のイベントで配りたい」「3ヶ月後に発売したい」といったタイトなスケジュールでは、特殊な傘の開発はまず間に合いません。

構造の検討、サンプルの修正、精度を高めるための調整、そして量産製造の期間までを考慮し、通常の傘開発よりもはるかに長い余裕を持ったスケジュールを組んだ上で、お早めにお問い合わせいただくことが成功への近道です。

まとめ:プロの知見を頼ることで、現実的な「ベスト」が見えてくる

特殊な形状の傘づくりは、デザインの理想と、構造・量産という現実のバランスをどう取るかがすべてです。

 

まずは仕様を決め込まず、皆さんの「こんな傘を作りたい!」という熱い想いや概念的なアイデアをそのままお聞かせください。アンベルの持つノウハウを活かし、実現に向けたベストな方法を一緒に探らせていただきます。

 

「まずは話だけでも聞いてみたい」「このアイデアは実現可能か相談したい」という担当者様は、ぜひスケジュールに余裕を持ってお気軽にお問い合わせください。


<執筆者:辻野義宏> アンベル株式会社 CEO。30年以上に渡って傘の開発および研究を続けている。革新的な機能を追求し続ける日本の傘ブランド「AMVEL (アンベル) 」では、時代によって変化するベストを追求し、最先端の技術を駆使した傘をお届けしています。noteでも執筆中。