「折りたたみ傘を使うのは便利だけれど、使い終わったあとに綺麗にたたむのが面倒……」
「急いでいるときに限って、傘の生地がうまくまとまらない!」
そんな日常の小さなストレスを解消するアイテムとして、最近トレンドになっているのが「形態安定傘」です。
一瞬でサッと綺麗にたためるこの傘は、店頭やECサイトでも非常に高い人気を集めています。自社ブランドでのオリジナル傘の製造(OEM)を検討されている企業様にとっても、今まさに大注目の仕様と言えるでしょう。
しかし、この形態安定傘の製造には「生地の相性」という非常に重要な注意点があります。今回は、形態安定傘の仕組みとメリット、そしてOEM企画時に必ず知っておくべき技術的な仕様の制限について詳しく解説します。
なぜ人気?「たたみやすい形態安定傘」のメリット
形態安定傘がこれほどまでに支持されている最大の理由は、なんといっても「一瞬でサッと綺麗にたためる」という圧倒的な快適さにあります。
そして、その優れたたたみやすさを背後で支えている秘密が、傘生地(小間:こま)の裏側に特殊な方法で貼り付けられた「PETパネル(PETフィルム)」です。この加工を施すことで、主に2つの大きなメリットが生まれます。
※生地そのものに熱を加え、折り目を残す方式を弊社では「形状記憶」と呼んでいますが、「形態安定」「形状記憶」ともに正式な名称はなく、各メーカーが定義した名称で表現しています。
傘をたたむストレスからの解放
折りたたみ傘を綺麗にたたむには、通常であれば1小間ずつ手で折り目を整える必要があります。しかし、裏面に貼られたPETパネルがガイドの役割を果たすため、傘を閉じるだけで生地が自然と正しい折り目に沿ってパタパタと畳まれていきます。 数秒でスマートに収納できる手軽さが、多くのユーザーに愛される理由です。
長く綺麗に使える耐久性の向上
通常の傘は、何度も大雑把にたたんでいるうちに、生地に余計なシワやクセがついてしまい、見た目が損なわれてしまいがちです。PETパネル加工が施された傘は、常に決まった折り目で美しくたたまれるため、シワがつきにくく、新品のような綺麗なシルエットを長くキープすることができます。
アンベル株式会社でも形態安定傘のOEMを承っています
弊社(アンベル株式会社)でも、この「形態安定傘」のOEM受託に対応しております。
「機能性に優れた新しい折りたたみ傘をラインナップに加えたい」「トレンドを押さえた高付加価値な日傘・雨傘を開発したい」という企業様に向けて、これまでに培った傘製造のノウハウを活かし、企画から生産までトータルでサポートいたします。
しかし、この画期的な形態安定傘を企画するにあたり、どうしても避けて通れない「仕様の制限」が存在します。
OEM企画前に知っておきたい!PETパネル加工の注意点
「すべての傘生地にPETパネルを貼れるわけではない」という点が、OEMの仕様を検討する上での大きなポイントになります。
貼り付けが「できない」生地とは?(遮光フィルム)
最も注意が必要なのが、生地の裏側にポリウレタンフィルム(遮光フィルム)をラミネートしているタイプの傘生地です。高い遮光性を謳う日傘などで非常によく使われる人気の生地ですが、残念ながらこの「遮光フィルムタイプ」にはPETパネルを貼り付けることができません。
なぜ遮光フィルムにはPETパネルを貼れないのか?
その理由は、PETパネルを生地に接着させる際の「熱」にあります。
【技術的な理由】
生地の裏側にPETパネルをしっかりと定着させるためには、製造工程において相当な高温の熱をかける必要があります。しかし、ポリウレタン製の遮光フィルムは熱に弱いため、PETパネルを貼る際の高熱によってフィルム自体が溶けてしまいます。 フィルムが溶けてしまうと、遮光性能が失われる以前に、そもそも傘生地として成立しなくなってしまいます(製品化は不可能です)。
貼り付けが「可能な」生地
逆に、以下のような生地であればPETパネルを問題なく貼り付けることが可能です。主に生地の裏面にコーティング加工が施されているタイプが対象となります。
- 生地の裏面がポリウレタン(PU)コーティングタイプ(フィルムではなく、裏面に液状の樹脂を塗布・加工したもの)
- 普通の雨傘のアクリルコーティングタイプ(裏面にアクリル樹脂を加工したもの)
同じポリウレタンを使った日傘生地であっても、「フィルム(ラミネート)」か「コーティング」かによって可否が分かれます。遮光フィルムによる高い遮光性を選ぶか、あるいは形態安定のたたみやすさを選ぶか、企画の段階で方向性を明確にする必要があります。
まとめ:形態安定傘の企画・仕様検討のポイント
一瞬でたためる形態安定傘は、エンドユーザーにとって非常に魅力的な商品であり、他社製品との差別化にも最適です。
しかし今回解説した通り、「遮光フィルム生地にはPETパネルが貼れない(傘生地として成立しなくなる)」という技術的な制約があります。OEMをお考えのお客様は、この特性をしっかりとご理解いただいた上で、ターゲット層や商品のコンセプト(遮光性を最優先にするのか、利便性を最優先にするのか)に合わせた企画・仕様のご検討をお願いいたします。
「自社が考えているデザインや生地で製造できるか不安」「まずは相談してみたい」という担当者様は、ぜひお気軽にアンベル株式会社までお問い合わせください。経験豊富なプロフェッショナルが、最適な仕様をご提案させていただきます。
<執筆者:辻野義宏> アンベル株式会社 CEO。30年以上に渡って傘の開発および研究を続けている。革新的な機能を追求し続ける日本の傘ブランド「AMVEL (アンベル) 」では、時代によって変化するベストを追求し、最先端の技術を駆使した傘をお届けしています。noteでも執筆中。
