お店で傘を手にとったとき、商品タグやラベルに「中国製」や「日本製」といった原産国表示があるのを見たことがあるでしょう。これは、単なる生産地の情報ではなく、その傘がどのような環境で、どのような品質基準のもと作られたかを知るための重要な手がかりです。
ここでは、この原産国表示に込められた意味や、そのルール、そして表示を読み解くことで、より良い傘を選ぶためのヒントを詳しく見ていきましょう。
原産国表示は、家庭用品品質表示法という法律が定める、傘の品質表示と深く関わっています。この法律では、以下の4つの項目を必ず表示することが定められています。
傘生地の組成: 生地に使われている繊維の種類と割合。
親骨の長さ: 傘のサイズを示す重要な指標。
取扱い上の注意: 傘を安全に使うための注意書き。
表示者名等の付記: 製造または輸入した会社の情報。
これらの表示は、消費者が製品の品質を正しく理解するために不可欠な情報です。
家庭用品品質表示法には、原産国表示自体の直接的な義務は明記されていません。しかし、景品表示法という別の法律が定める「不当表示の禁止」という原則があるため、事実上、原産国表示は不可欠となります。
もし原産国を表示しないと、消費者はその製品を「日本製」だと誤解する可能性があります。特に、日本語のブランド名や和風のデザインが使われている場合、その誤解はさらに強くなります。こうした消費者の誤解を招く表示は、法律で厳しく禁止されているため、不当な表示と見なされ、法的なリスクが生じる可能性があります。
つまり、「表示しなくてもよいか?」という問いに対する答えは、「表示しないことが、かえって法律上のリスクを招くため、必ず表示すべきである」となります。
「原産国」は、原材料や部品の生産地ではなく、製品の機能や価値を決定づける最も重要な工程が行われた国を指します。傘の場合、この「実質的な変更」をもたらす行為は「縫製・組み立て」と解釈されます。
シナリオA: 傘の生地が中国で織られ、日本で縫製・組み立てられた場合 → 「日本製」
シナリオB: 傘の主要な部品が中国で製造され、日本で最終的な仕上げが行われた場合 → 「中国製」
なぜ原産国が異なるのでしょうか?
シナリオAでは、バラバラの部品と生地を組み合わせて、傘としての完全な形と機能を持たせる「縫製・組み立て」という決定的な工程が日本で行われたため、「日本製」と判定されます。 一方、シナリオBの「最終的な仕上げ」が、単なるラベルの貼り付けや梱包のみを指す場合、それは製品の本質的な変更とは見なされません。そのため、機能性を決定づける主要な製造工程が行われた中国が原産国となります。
このように、原産国表示は、部品の一つひとつではなく、「その製品がどこで生まれたか」という最終的な製造責任の所在を示していると理解することができます。
最近では、骨や生地は中国で製造し、縫製・組み立てはカンボジアで行うといったように、複数の国で製造工程を分担するケースが増えています。この場合、原産国は「カンボジア製」と表示されます。
原産国表示は、消費者が傘を選ぶ際の重要な情報源です。表示内容を読み解くことで、以下の点を考慮することができます。
品質の判断: 原産国は、その国の製造技術や品質管理の基準を推測する手がかりになります。
価格の背景: 原産国によって、人件費や輸送費などが異なり、それが製品の価格に反映されている場合があります。
もちろん、原産国表示だけで傘の品質すべてが決まるわけではありません。しかし、原産国表示は、お客様が傘の背景にある物語や、製造者のこだわりを想像し、より納得して製品を選ぶための重要な情報源となるのです。
原産国表示は、消費者のためだけでなく、傘を輸入する事業者にとっても非常に重要な意味を持ちます。
通関手続きの必要情報
海外で製造された傘を日本に輸入する際、関税が課せられます。この関税を計算するためには、その傘がどこで生産されたかを示す原産国表示が必須となります。
税率の決定
原産国によって関税率が異なる場合があるため、正確な原産国表示は適正な税率を適用するために欠かせません。
法的リスクの回避
通関時に原産国表示に不備があったり、虚偽の表示がされていたりすると、輸入が差し止められるリスクがあります。これは、関税法という法律によって厳しく規制されているためです。
このように、原産国表示は、消費者の信頼を得るためだけでなく、貿易取引を円滑に進める上でも不可欠な情報なのです。
アンベル株式会社では、お客様が安心して傘をお使いいただくために、正確な品質表示を徹底しています。