街で個性豊かな柄の傘を見かけることが増えました。写真のようなリアルなデザインや、美しいグラデーションが施された傘。これらを可能にしているのが、インクジェットプリントという印刷技術です。
従来の傘の柄は、生地を染めたり織ったりする方法が主流でしたが、インクジェットプリントは、まるで家庭用のプリンターのように、デジタルデータをもとに直接生地に印刷します。この技術が、傘のデザインに新たな可能性をもたらしているのです。ここでは、インクジェットプリントの仕組みや種類、そして品質の秘密を詳しく見ていきましょう。
インクジェットプリントには、主に2つの方法があります。それぞれにメリットとデメリットがあり、用途や目的に応じて使い分けられています。
専用のインクジェットプリンターを使い、傘の生地に直接インクを吹き付けて印刷する方法です。
メリット:
色鮮やかで繊細な表現: グラデーションや写真のような複雑なデザインも鮮やかに再現できます。
小ロット生産に最適: 版を作る必要がないため、少量生産やオリジナル傘の製作、サンプル作成にぴったりです。
デメリット:
耐久性の課題: 生地やインクの種類、後処理によっては、摩擦や水に弱く、印刷が剥がれたり色落ちしたりする可能性があります。
まず、特殊な昇華転写紙にデザインを印刷し、その紙を生地と重ねて高温で圧着することで、インクを気化させて生地の繊維に染み込ませる方法です。
メリット:
高い耐久性: 印刷が生地の繊維に深く染み込むため、摩擦や水に強く、色落ちしにくいのが特徴です。
撥水加工との相性が良い: 撥水加工を施した生地にもきれいに印刷できます。
デメリット:
熱で色が落ちやすい: 昇華転写は熱で染料を気化させる原理を利用しているため、高温に晒されると色が落ちる、つまり色が移行昇華する可能性があります。
インクジェットプリントは、自由なデザインを可能にする一方で、染色堅牢度(せんしょくけんろうど)という品質項目に注意が必要です。染色堅牢度とは、染めた色が水や摩擦、光などによって色落ちしたり変色したりする度合いを示す指標です。
なぜ注意が必要か:
インクジェットプリントは、使用するインクや生地、防水・撥水加工との相性によって、染色堅牢度が大きく変わる可能性があります。特に傘は雨に濡れることを前提とした製品であるため、色落ちや色移りを防ぐための工夫が欠かせません。
これらの問題を解決するため、アンベル株式会社では、生地に適したインクの選定や、後処理(熱処理など)を適切に行うことで、インクジェットプリントの染色堅牢度を高める努力を続けています。
インクジェットプリントは、これまでの傘にはなかった多様なデザインを可能にし、オリジナル傘や企業ロゴ入り傘、アート作品など、幅広い用途で活用されています。
しかし、インクジェットプリンターは比較的安価な設備投資で導入できるため、誰でも簡単に始められるという側面も持ち合わせています。だからこそ、色調整やインクの特性に関する深い知識を持ったオペレーターが操作することが、高品質な製品を作る上で非常に重要となります。
今後も、より高性能なインクや新しい印刷技術の開発が進み、さらに耐久性が高く、環境にも優しい傘が生まれていくことが期待されます。傘を選ぶ際には、デザインの美しさだけでなく、印刷方法や品質表示にも注目してみましょう。
アンベル株式会社では、お客様に安心して長く使っていただけるよう、インクジェットプリントの品質管理にも徹底的にこだわっています。