傘を広げたとき、そこに広がる美しいドーム状の生地。この傘のカバーは、実は一枚の布ではなく、複数の三角形の布片を縫い合わせて作られています。この三角形の布片を、傘作りにおいてはこま(小間・駒)と呼びます。こまは、傘の美しさ、強度、そして機能性を左右する、非常に重要な要素です。その役割、形状、そしてそれを生み出す職人の技術について、詳しく見ていきましょう。
こまは、親骨の本数に合わせて作られるため、その形状や裁断には緻密な計算と職人の技術が求められます。
ほとんどのこまは、二等辺三角形またはそれに近い形状に裁断されます。しかし、傘の形状によっては、より美しいドーム型を描くために、辺が緩やかな曲線になっている場合もあります。
こまの数: こまの数は、傘の親骨の数と同じになります。
8本骨の傘: 8枚のこまが使われます。
16本骨の傘: 16枚のこまが使われます。 こまの数が多いほど、傘のシルエットはより円形に近くなり、風に対する強度も増します。
こまを正確に裁断することは、傘作りの最も重要な工程の一つです。
こま裁断用の木型: こまの裁断には、傘のサイズや形状に合わせて作られた木型が使われます。この木型は、傘骨の形状や生地の厚みに合わせて微調整が必要であり、傘作りにおける技術と経験を要する部分です。
裁断: 木型に沿って、生地を正確に裁断します。この工程の精度が、傘生地がきれいに張れるかどうかを左右します。
こまの品質は、傘全体の耐久性や美しさに直結するため、厳格な検査が行われます。
撥水度: 傘の生地がどれだけ水をはじくかを測る試験です。生地に水を噴射し、その水滴がどのように転がり落ちるかを評価します。撥水度が高いほど、傘の機能性が高いと判断されます。
堅牢度: 傘の生地の色が、摩擦や水濡れ、汗などによってどれだけ変化しにくいかを測る試験です。特に、色移りや変色がないかを細かくチェックし、美しさが長持ちすることを保証します。
耐水度: 傘の生地が、どれだけの水圧に耐えられるかを測る試験です。生地に圧力をかけた状態で水を噴射し、水が漏れないかを確認します。これにより、豪雨などでも水が浸透しない、高い防水性を保証します。
これらの検査は、こまの品質が傘全体の性能に与える影響を総合的に評価するために不可欠な工程です。
こまの語源: 「こま」という言葉は、織物や染物の世界で、区切られた部分や小さな布片を指す言葉が転じたものとされています。
傘と日本の職人技: こまの裁断や縫製には、日本の伝統的な職人技が活かされています。特に多骨傘や特殊な形状の傘は、職人の熟練した技術なくしては作れません。
このように、こまは一見目立たない部分ですが、傘の美しさと機能性を保つ上で非常に重要な役割を果たしています。
アンベル株式会社では、お客様に安心して傘をお使いいただくために、素材選びから構造設計に至るまで、細部にまでこだわって製品開発を行っています。
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