お店で傘を選ぶとき、商品タグや生地に付いているラベルをじっくり見たことはありますか?そこには、その傘がどんな素材で、どれくらいのサイズで、どう使えば安全かといった、大切な情報が詰まっています。
日本では、家庭用品品質表示法という法律に基づき、傘に品質表示をすることが義務付けられています。ここでは、その表示項目が持つ意味を一つひとつ紐解き、信頼できる傘を見分けるための知識を身につけましょう。
家庭用品品質表示法では、以下の4つの項目を必ず表示することが定められています。
生地がどのような繊維でできているか、その割合(混用率)が表示されています。
繊維の種類: 「ポリエステル100%」のように、生地に使われている繊維の種類が記載されます。複数の素材が使われている場合は、重量の多い順に表示されます。
ビニール素材: ビニール傘の場合、「ポリエチレン」「ポリ塩化ビニル」といった具体的な素材名で表示されます。「POE」や「PVC」のような略称は、消費者庁のガイドラインで認められていません。
この表示を見ることで、傘の風合いや重さ、お手入れの方法などをある程度判断できます。
親骨の長さは、傘のサイズを示す最も重要な指標です。この表示を見ることで、どれくらいの大きさの傘なのかが分かります。
傘のサイズは親骨の長さで決まります。自分に合ったサイズを選ぶ際の参考にしましょう。
傘を安全に、そして長く使うための注意事項が表示されています。
などの注意書きは、傘の破損や怪我を防ぐための大切な情報です。
傘を製造した会社名、住所、電話番号などが表示されています。
この表示は、製品に何か問題があったときや、修理の相談をしたいときに、どこに連絡すればよいかを示すための重要な情報です。
法律で義務付けられている項目以外にも、傘の特徴や性能を示すための表示がされることがあります。
遮光傘: 「遮光率99%以上」など、遮光率の数値が表示されます。
日傘: 「UVカット99%以上」など、紫外線遮蔽率の数値が表示されます。
耐風傘: 「耐風」の表示や、風速〇〇m/sに耐えるといった表示がされることがあります。
晴雨兼用傘: 「晴雨兼用」と表示され、雨の日だけでなく日差し対策にも使えることを示します。
自動開閉傘: 「自動開閉」と表示され、ボタン一つで開閉できることを示します。
これらの表示は、商品の特徴を分かりやすく伝えるためのものであり、傘選びの重要なヒントになります。
「UVカット100%」「遮光率100%」といった表示は、高い品質を求めるお客様にとって重要な判断基準となりますが、以下のルールに基づいて記載されています。
試験方法の明記: 「100%」という表現を用いる場合は、必ずJIS規格に基づいた試験方法を明記しなければなりません。例として、紫外線遮蔽率であれば「JIS L 1925」、遮光率であれば「JIS L 1055 A法」などがあります。
製品全体の性能ではない: 「100%」という検査結果は、あくまで試料(生地の一部)に基づくものであり、製品全体の性能を保証するものではない旨を併記する必要があります。傘は、縫い目や骨を通す部分などから、ごくわずかに光が漏れる可能性があるからです。
「完全」という表現の非使用: 機能性の表示において、「完全遮光」といった「完全」という表現は使用できません。これは、お客様に誤解を与えないための大切なルールです。
「完全遮光」という言葉: 遮光率100%の製品は、一般的に「完全遮光」と言われる製品と同等の品質です。しかし、上記の理由から、生地の縫い目などから光が漏れる可能性があるため、「完全遮光」と表現することは控えています。
品質表示は、単なるラベルではなく、その傘の「履歴書」のようなものです。素材の品質、製造者の責任、そして安全な使い方まで、様々な情報が込められています。
次に傘を選ぶ際には、これらの品質表示をじっくりと見てみましょう。それぞれの表示が持つ意味を理解することで、ご自身にぴったりの、そして長く愛用できる信頼性の高い傘を見つけることができるはずです。