親骨の曲げ強さ(3点負荷)

傘の「折れない」を証明:親骨の曲げ強さ(3点負荷)試験とは

強い風が吹く雨の日、傘が裏返っても骨が折れずに済んだ――そんな経験はありませんか?傘の頑丈さを支えているのは、まさに骨格である親骨の強度です。その強度を測る上で、非常に重要な役割を果たすのが親骨の曲げ強さ(3点負荷)試験です。

これは、傘の骨がどのくらいの力に耐えれば折れてしまうのか、その限界を数値で証明する試験です。ここでは、安心してお使いいただける傘がどのようにして作られているのか、その品質管理の舞台裏を詳しく見ていきましょう。


なぜこの試験が必要なのか?

傘の親骨は、ただ風に耐えるだけでなく、瞬間的な強い衝撃にも耐える必要があります。日常で傘を乱暴に扱ってしまったり、予期せぬ強い突風に煽られたりしたとき、親骨の素材そのものが持つ強度が問われます。

この「3点負荷」という試験は、親骨を傘から取り外し、骨材そのものに一点集中で力を加えることで、素材本来の曲げに対する抵抗力、つまり「どれだけの力で折れるか」を測定します。これは、傘全体の構造を評価する従来の試験とは異なり、親骨という単一の部品が持つ究極のポテンシャルを明らかにするための試験です。


3点負荷試験の仕組みと方法

この試験は、JIS(日本産業規格)に準拠した方法で、親骨の真の強さを引き出します。

試験方法

JIS S 4020:1994という規格が用いられます。具体的な手順は以下の通りです。

  1. 親骨の準備: まず、傘から親骨を一本ずつ丁寧に取り外します。これは、傘全体の構造ではなく、骨材そのものの強度を正確に測るためです。

  2. 治具への設置: 親骨を3点負荷治具という専用の器具にセットします。これは、両端の2点で親骨を支え、中央の1点で押し当てることで、親骨を曲げる力を加えるための装置です。

  3. 荷重の印加: 親骨の中央部分に、一定の速度でゆっくりと力を加えていきます。

  4. 測定: 親骨が「カチッ」と音を立てて破損した瞬間の荷重を記録します。この荷重が、親骨の持つ最大の曲げ強度となります。


試験結果が語る傘の強度

この試験の合格基準は50N(ニュートン)以上とされています。これは、およそ5kgの重さに耐えられることを意味します。この数値は、傘の骨がどれだけ頑丈に作られているかを示す、信頼の証です。

  • 50Nの重み: 親骨が50N以上の力に耐えられるということは、日常生活で想定される様々な負荷、例えば、手荷物がぶつかったり、誰かに軽くぶつけられたりする程度の衝撃では、そう簡単には折れないことを示しています。

この試験は、瞬間的な強い力に耐え、壊れにくい傘を選ぶ上で、非常に重要な指標となります。


親骨の素材と強度の関係

親骨の強度は、使用されている素材によって大きく異なります。

  • スチール: 重いですが、非常に高い強度を持ちます。しかし、しなりにくいため、限界を超えると「ポキッ」と折れてしまうことがあります。

  • グラスファイバー: 軽くてしなやかで、柔軟性に富んでいます。強い風を受けてもしなることで力を逃がすため、折れにくいという特性があります。3点負荷試験では、スチールほど高い荷重に耐えなくても、実際の使用環境ではより優れている場合があります。

  • カーボンファイバー: 軽量でありながら、非常に高い強度を誇ります。しなやかさも兼ね備えているため、高価な傘の親骨としてよく採用されています。

最近の折りたたみ傘では、親骨の箇所によって素材を使い分けるハイブリッドな組み合わせが主流です。 例えば、石突に近い元親骨には強度が高いアルミニウム、中間部分の中親骨には軽量なカーボンファイバー、そして先端の先親骨には柔軟なグラスファイバーといった組み合わせが見られます。このように、それぞれの素材が持つ特性を活かすことで、軽さ、強度、柔軟性のバランスを最適化しているのです。


アンベル株式会社では、お客様に安心して傘をお使いいただくために、このような厳格な品質試験をクリアした製品をお届けしています。

 

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