雨の日に強い風が吹いたとき、傘が裏返ったり、親骨が折れてしまったりする経験はありませんか?傘の骨格である親骨の強度は、こうした事態を防ぐために非常に重要な品質要素です。この強度を客観的に評価するために行われるのが、親骨の曲げ強さ(6N荷重)試験です。
ここでは、傘の安全性を確保する上で欠かせない、この品質管理のプロセスについて、その仕組みと基準を詳しく見ていきましょう。
傘の親骨は、傘布を支え、傘の形状を維持するだけでなく、風圧などの外部からの力を受け止める役割を担っています。もし親骨の強度が不十分だと、以下のようなリスクが生じます。
傘が裏返る: 弱い風圧でも親骨が簡単に曲がってしまい、傘が裏返ってしまいます。
親骨の破損: 強風が吹いたときに親骨が折れ、傘が使えなくなるだけでなく、破片で怪我をする危険性もあります。
この試験は、このような事態を未然に防ぎ、傘が安全に機能するための最低限の強度を持っているかを確かめるために不可欠なものです。
この試験は、JIS(日本産業規格)に準拠した方法で、親骨が受けるであろう静的な力を再現して行われます。
JIS S 4020:1994という規格が用いられます。以下に具体的な手順を解説します。
傘の設置: 傘を完全に開いた状態で水平に保持し、中棒の先端である石突と手元を固定します。これにより、傘が安定した状態で力を受ける状況を再現します。
荷重の印加: 親骨の先端部分に、傘の内側方向へ6N(ニュートン)の荷重を加えます。これは、およそ612gの重さに相当します。この荷重の方向は、風圧が親骨を内側に曲げようとする力と一致しています。
保持時間: 荷重を加えた状態を1分間保持します。この1分間という時間は、親骨が継続的な力にどれだけ耐えられるかを厳密に評価するためのものです。
観察と判定: 1分後、荷重を除去し、親骨に「亀裂、破損、破断」などの異常や、著しい変形が起きていないかを細かく目視で確認します。
この親骨の曲げ強さ試験は、数十年前、親骨の素材がスチールを前提として作られたものです。そのため、現代の傘の多様な構造や素材を考慮すると、この試験方法が必ずしも最適な評価方法ではないという意見もあります。
特に、以下のような点に課題があります。
超軽量傘への適用: 近年の超軽量傘では、親骨にグラスファイバーやカーボンファイバーといった軽量かつ柔軟な素材が使われることが増えています。これらの傘は、風の力を受け流すことで折れにくく設計されています。そのため、静的な荷重を加えるこの試験では、実際の耐風性が十分に評価できない可能性があります。
折りたたみ傘への適用: 親骨が3段以上に分かれている折りたたみ傘では、親骨自体の構造が複雑です。この試験では、親骨全体を一体として評価するため、各セクションの強度や関節部分の耐久性など、折りたたみ傘特有の性能を十分に測ることが難しい場合があります。
この試験は、長年の信頼実績がある一方で、現代の傘の多様化に対応した新たな評価方法が求められていると言えるでしょう。
この試験をクリアした傘は、日常の使用で想定される風圧や、その他の静的な力に耐えうる十分な強度を持っていると判断できます。
合格基準: 試験後、親骨に目立った損傷や変形が認められない場合、合格となります。
この試験が保証するもの: 親骨が、ある一定の継続的な力に対して、その形状と強度を保つことができることを証明しています。これにより、ユーザーは、風の強い日でも傘が突然裏返ったり折れたりするリスクが少ない、信頼性の高い製品を選ぶことができます。
ただし、この試験はあくまで静的な荷重に対する評価であり、突風などによる瞬間的な衝撃や、傘が裏返った後の復元力などを評価するものではありません。傘の品質を総合的に評価するには、他の試験項目と合わせて考える必要があります。
高い親骨強度を実現するためには、様々な工夫が傘に凝らされています。
素材の選定: スチール、グラスファイバー、カーボンファイバーなど、強度と柔軟性を兼ね備えた素材が使われます。特にグラスファイバーは、風を受けてもしなることで力を逃がし、折れにくいという特性があります。
親骨の構造: 親骨の太さや肉厚、そして形状が、強度に大きく影響します。より太く、肉厚のある親骨は、高い強度を誇ります。
本数: 親骨の本数が多いほど、傘布を支える面積が広がり、一本一本にかかる負担が軽減されるため、傘全体の強度が増します。
このように、親骨の曲げ強さは、傘の安全性と耐久性を語る上で、非常に重要な指標です。
アンベル株式会社では、お客様に安心して傘をお使いいただくために、このような厳格な品質試験をクリアした製品をお届けしています。