傘を開いたとき、骨組みの先端が集まる中棒の付け根を、内側から覆っている布製の部品、それが菊座です。その名の通り、菊の花のような形をしているこの小さなパーツは、傘の美しさを保つだけでなく、機能性を高める上で非常に重要な役割を担っています。一見すると目立たない存在ですが、菊座の有無や品質が、傘の耐久性や使い心地を大きく左右します。菊座の役割、素材、製造方法、そして品質について、詳しく見ていきましょう。
菊座は、傘の構造において不可欠な役割を担っています。
傘布の保護: 傘の開閉時には、親骨の先端と傘布が常に擦れ合います。菊座は、親骨の先端が傘布に直接触れるのを防ぐクッションの役割を果たし、傘布の破れや摩耗を防ぎます。
雨水の侵入防止: 傘の頂点部分は、親骨と傘布の間にわずかな隙間が生じやすい部分です。菊座は、この隙間をしっかりと塞ぐことで、雨水が傘の中に侵入するのを防ぎ、高い防水性を保ちます。
美観の向上: 傘の内側から見たとき、菊座は中棒の周りを美しく装飾します。傘布と同じ素材を使うことで統一感を出したり、レースや刺繍でデザインのアクセントを加えたりするなど、見た目の美しさを高める重要な要素です。
菊座は、傘の耐久性、防水性、そして美観を支える上で、欠かせない存在なのです。
菊座に使われる素材は、その役割に応じて使い分けられます。
共布(傘布と同じ素材) 最も一般的な素材です。
メリット: 傘全体に統一感が生まれ、すっきりとした印象を与えます。
デメリット: 縫製によって作られるため、ばらつきが生じることがあります。
シリコーン アンベル株式会社では、特にこの素材にこだわっています。
メリット: 優れた防水性と密着性を持ち、雨水の侵入をより確実に防ぎます。また、伸縮性があり、骨組みの動きにも柔軟に対応できます。
デメリット: 共布に比べてデザインの自由度は低くなります。
菊座の製造方法は、技術の進歩とともに進化しています。
昔ながらの製法で、布を裁断し、菊の花のように縫い合わせて作られます。
特徴: 職人の手作業が必要なため、製造に時間がかかり、仕上がりにばらつきが出ることがあります。
現在の技術では、縫製を行わず、超音波ウェルダー機という特殊な機械を使って菊座を成形する工場が増えています。
特徴:
精度の向上: 縫い目がないため、仕上がりのばらつきが少なく、均一で美しい菊座を短時間で制作できます。
密着性・防水性の向上: 超音波の熱で生地を溶着させるため、縫い目から水が侵入する心配がなく、高い防水性を実現します。
サイズの選択肢: 工場によって異なりますが、外径が2.2mm、2.5mm、2.8mm、3.2mm、3.8mm(工場によっては3.5mm)など、様々なサイズから選ぶことができます。
菊座の品質は、傘全体の耐久性や機能性に直結するため、厳格な検査が行われます。
漏水性: 菊座と傘布の接合部分から水が漏れないかを確認する試験です。特に超音波菊座は、この部分の密着性が非常に重要となります。
名称の由来: 「菊座」という名前は、その形状が菊の花のように見えることから付けられました。
高級傘の証: 一部の高級傘では、菊座に職人による丁寧な刺繍が施されたり、特殊な素材が使われたりするなど、細部にまでこだわった作りになっています。
このように、菊座は小さく目立たない部品ですが、傘の耐久性と美観を保つ上で非常に重要な役割を果たしています。
アンベル株式会社では、お客様に安心して傘をお使いいただくために、素材選びから構造設計に至るまで、細部にまでこだわって製品開発を行っています。