雨が上がったとき、傘を左右に振って水滴を払い落とす。誰もが当たり前に行うこの動作が、実は傘に大きな負担をかけていることをご存じでしょうか?この日常的な動きに耐えうる耐久性を測るために行われるのが、回転トルク試験です。
これは、傘が繰り返しねじられる力にどれだけ耐えられるかを調べる、傘の品質を語る上で非常に重要な試験です。ここでは、お客様に長く愛用していただける傘がどのようにして作られているのか、その品質管理の舞台裏を詳しく見ていきましょう。
傘を振る、回すといった動作は、傘の骨組み全体にねじれる力(トルク)を発生させます。この力が、特に中棒と手元の接続部分や、親骨とろくろの接続部分に集中してかかります。もしこの部分の強度が不十分だと、以下のような不具合が生じる可能性があります。
接続部分の緩みや破損: 繰り返し加わるねじれによって、手元が中棒から抜けたり、骨組みの接続部分が緩んだり、最悪の場合、折れてしまうことがあります。
スムーズな開閉の阻害: 接続部分が緩むと、ろくろの動きがぎこちなくなり、開閉がスムーズに行えなくなります。
回転トルク試験は、これらの問題を未然に防ぎ、傘の耐久性を客観的に保証するために不可欠なものです。
この試験では、専用の機械を用いて、傘に実際の使用状況に近いねじれを再現します。
傘のセット: 傘を完全に開いた状態で、専用の回転トルク試験機に固定します。この際、手元に固定するのが基本ですが、飾り手元やネジ式の手元など、通常の固定方法が難しい場合は中棒(シャフト)を直接固定します。
左右に回転: 機械を使って、傘を180度左右に繰り返し回転させます。この回転回数は、傘の種類によって異なります。
長傘: 100回
2段折りたたみ傘: 40回
3段折りたたみ傘: 20回
チェック: 規定の回転数を終えた後、傘を取り外して、骨や各部品に亀裂、破損、変形などの異常がないかを丁寧に調べます。
回転トルク試験の合否は、中棒(シャフト)の品質に大きく依存します。中棒の素材、外径、そして肉厚が、ねじれる力に対する抵抗力に直結するからです。
合格: 傘の骨や部品に、亀裂、破損、変形がない。
不合格: 傘の骨や部品に、亀裂、破損、変形がある。
特に、強度と柔軟性のバランスが重要となります。中棒が太く肉厚であるほど耐久性は増しますが、同時に重さも増します。そのため、製造者は軽さと強度の最適なバランスを追求しています。
種類 | 外径 | 肉厚 | |
スチール(鉄) |
親骨の長さが55cmまで | 10mm未満 | 0.45mm以上 |
10mm以上 | 0.40mm以上 | ||
親骨の長さが55cm〜70cmまで | 10mm未満 | 0.50mm以上 | |
10mm以上 | 0.40mm以上 | ||
アルミニウム合金 | 8mm | 1.00mm以上 | |
10mm | 0.65mm以上 |
種類 | 外径 | 肉厚 | |
スチール(鉄) |
--- | 0.40mm以上 | |
アルミニウム合金 | 10mm未満 | 0.50mm以上 | |
10mm以上 | 0.45mm以上 |
※許容誤差:外径の呼び寸法マイナス0.25mm/肉厚マイナス0.02mm
回転トルク試験は、私たち消費者には見えない品質の証です。この試験をクリアした傘は、日常的な動作に耐えうる信頼性の高い製品だと言えます。
中棒の太さ: 傘を選ぶ際は、中棒がしっかりしているかどうかも一つの目安になります。中棒が細いほど軽量ですが、肉厚や素材によっては耐久性が劣る場合もあります。
素材: アルミニウム合金やスチールなど、使われている素材も耐久性に影響します。特に、折りたたみ傘では軽量化のために中棒が細くなりがちなので、素材の選定が重要になります。
このように、回転トルク試験は、傘の目に見えない耐久性を語る重要な指標です。この基準をクリアした傘は、ただ雨をしのぐだけでなく、安心して長く愛用できる製品だと言えるでしょう。
アンベル株式会社では、お客様に安心して傘をお使いいただくために、このような厳格な品質試験をクリアした製品をお届けしています。