傘を開いたときに、親骨を内側から支えるように放射状に伸びる短い骨組み、それが受骨です。一見地味な存在ですが、受骨は親骨とともに傘の骨格を形成し、傘布を美しく張り、傘全体の強度と安定性を保つ、まさに「縁の下の力持ち」です。受骨の素材や構造の違いによって、傘の耐久性や使い心地は大きく変わります。
受骨は、単なるサブパーツではありません。傘の性能を左右する、多岐にわたる重要な役割を担っています。
親骨を支え、構造を安定させる: 親骨と中棒を連結し、傘の骨組み全体をしっかりと支えます。これにより、傘が風に煽られたり、開閉時の衝撃に耐えたりすることができます。
傘布を均等に張り、美しいシルエットを形成する: 受骨が傘布を内側から均等に引っ張ることで、シワのない美しいドーム状のシルエットを作り出します。見た目の美しさだけでなく、雨をスムーズに流す機能性にも繋がります。
親骨にかかる負担を分散する: 親骨に加わる力(風圧や開閉時の力など)を中棒へと効率的に分散させ、親骨の破損を防ぎます。受骨がなければ、親骨に全ての負担がかかり、傘が非常に壊れやすくなってしまいます。
受骨は、傘の強度、耐久性、そして美しさを支える上で欠かせない、非常に重要なパーツなのです。
親骨と同様に、受骨の素材も傘の性能や価格に大きく影響します。主な素材とその特徴を見ていきましょう。
スチール(鉄を主成分とする素材)
古くから使われている、受骨の定番素材です。
アルミニウム合金(アルミニウムを主成分とする、軽くて錆びにくい合金)
軽量化と耐食性を両立させた素材です。
グラスファイバー(GFRP:ガラス繊維を樹脂で固めた複合素材)
近年、主流になりつつある高性能な素材です。
カーボンファイバー(CFRP:炭素繊維を樹脂で固めた複合素材)
航空機にも使用される、最先端の軽量素材です。
ポリカーボネート
耐衝撃性に優れたプラスチック素材です。
受骨は、親骨と密接な関係にあり、その構造が傘の機能に大きく関わっています。
受骨と親骨の数: 受骨の本数は、親骨の本数と同じであるのが一般的です。これにより、傘布が均等に張られ、全ての親骨がバランスよく支えられます。ただし、特殊な構造の傘では、受骨が二股に分かれているタイプもあります。
受骨と親骨の接続: 受骨は親骨の途中にあるリベットで接続されています。この接続部分を「ダボ」と呼びます。ダボがスムーズに動くことで、傘の開閉が円滑に行われます。
受骨とろくろの関係: 受骨は、中棒を上下にスライドする「ろくろ」に接続されています。
うえろくろ: 親骨と繋がっており、傘を開いたときに固定される部分です。
したろくろ: 受骨と繋がっており、開閉時に中棒に沿って動く部分です。
長傘では、親骨に比べて受骨が太く(厚く)設計されていることが多く、これは親骨にかかる負担をしっかりと支えるための強度を確保するためです。
傘の強度と耐久性を測るために、さまざまな品質試験が行われます。受骨単体を特定した検査項目はないものの、傘全体の耐久性試験によって、受骨の強度が間接的に評価されます。
開閉耐久性試験: 傘を繰り返し開閉する試験です。500回以上の開閉に耐えられるかを検証することで、受骨を含む骨組み全体の耐久性を測ります。この試験は、受骨とろくろ、親骨、ダボなどの接続部分の強度やスムーズな動作を保証する重要な指標となります。
素材の強度を測る代替方法: 受骨の素材そのものの強度を確認したい場合は、親骨の検査項目である「親骨の曲げ強さ(3点負荷)」の方法を応用することがあります。これにより、受骨の素材がどのくらいの力に耐えられるかを客観的に評価することができます。
これらの検査は、目立たない部分だからこそ重要であり、ユーザーが安心して傘を使えるようにするために欠かせない工程です。
このように、受骨は一見目立たない部分ですが、傘の機能性や美観を保つ上で非常に重要な役割を果たしています。
アンベル株式会社では、お客様に安心して傘をお使いいただくために、素材選びから構造設計に至るまで、細部にまでこだわって製品開発を行っています。